トップ > マツダ アクセラ > マツダ アクセラ - 人気ブログ(Blog)検索結果詳細 (2008年12月4日 8時)
ホンダ オデッセイ アブソルート
キャラクター&開発コンセプト
メカ的には3代目の熟成進化版

2008年10月17日に発売された新型オデッセイは、初代(1994年)、2代目(1999年)、3代目(2003年)に続く4代目。あくまでファミリーミニバンだった初代と2代目を経て、3代目で大胆な低床・低重心化を行い脱ミニバン化を図ったオデッセイ。今回の4代目は、言うなればその3代目の熟成進化版だ。
基本的なパッケージングやパワートレイン形式は先代を踏襲しつつ、新型では内外装を刷新。VSAと協調制御する電動パワステ「モーションアダプティブEPS」、後退時に真上からの仮想映像をモニターに表示する「マルチビューカメラシステム」といった新装備も採用している。
クルーニー効果と「男ですから」で月間4000台が目標
広告コピーは「いいクルマが好きだ。男ですから」と男性層にアピール。イメージキャラクターにはテレビシリーズ「ER」(1994年~)でスターとなったジョージ・クルーニーを奮発し、クルマよりクルーニーの方を目立たせる、という手法でも話題?となっている。クルーニーはどちらかと言えば女性に人気があるから、それを当て込んでの高度な広告戦略かもしれない。
生産は埼玉製作所(埼玉県狭山市)。目標販売台数は先代より1000台減って月間4000台とされた。ホンダによると発売1ヶ月の受注台数は、先代が約2万5000台だったのに対して、世界同時株安と重なった不運のせいか今回は7500台となっている。今後のコンスタントな売れ行きに期待がかかる。
価格帯&グレード展開
259万円からスタート。一番人気はアブソルート(289万円~)

2.4リッター直4+CVT(4WDとアブソルートは5AT)の7人乗りで、4グレード構成。ラインナップは以下の通りだが、初期受注では先代でも人気だったアブソルートが半数を占める。
なお、最上級の「Li」だけ飛び抜けて高価なのは、ハイテク&安全装備を標準装備するため。装備内容はミリ波レーダーの搭載を必要とする車速/車間制御機能(ACC)&車線維持支援システム(LKAS)、追突軽減ブレーキ(CMBS)+E-プリテンショナー、そしてサイド&カーテンエアバッグとなる。
【2.4リッター直4(173ps、22.6kgm)】
■「M」 259万円(CVT・FF)/284万円(5AT・4WD)
■「L」 291万円(CVT・FF)/314万円(5AT・4WD)
■「Li」 338万円(CVT・FF)/361万円(5AT・4WD)
【2.4リッター直4(FF:206ps、23.7kgm/4WD:204ps、23.5kgm))】
■
「アブソルート」 289万円(CVT・FF)/314万円(5AT・4WD)
★今週の試乗車
パッケージング&スタイル
肉食から草食へ? もしくはFCXクラリティのワゴン版

ボディサイズは全長4800mm×全幅1800mm×全高1545mm。先代より全長が+35mm、全高は確実に立体駐車場に入るよう(デザイン的な兼ね合いもあろう)-10mmとなったが、ほとんど変化はない。ホイールベースは同じ2830mmだ。
見た目は「ブラックパンサー」を標榜した先代が肉食獣なら、新型は草食動物という感じか。ヘッドライトの青味が薄くなって目つきも優しくなり「怖いクルマ」という感じがなくなった。

ホンダ FCX クラリティ
(photo:本田技研工業)
むしろフロントビューやワンモーション風のサイドビューは、水素を食べて電池を生み出すホンダの燃料電池車「FCXクラリティ」にそっくり。日本国内でも11月からリース販売が始まったこの近未来カーのボディサイズは、全長4845mm×全幅1845mm×全高1470mm、ホイールベース2800mmと、オデッセイに近いと言えば近い。当然オデッセイのデザインはこの先進的なイメージを利用する意味合いもある。
抜本的に視界を改善

運転席からの眺めで最も変わったのは、先代で視界の妨げになっていたAピラーをスリム化し、サブAピラーを廃止したことだろう。Aピラーの位置もかなり後退し、おかげで先代にあった「左右の見にくさ」はかなり解消された。ドライビングポジションはホンダらしく低めだが、テレスコピック&チルトステアリングやシートリフターなどで調整の自由度は確保されている。

一方、インパネデザインは変わったような、変わってないような。パーツは全面変更され、例えばステアリングやメーターバイザーあたりの意匠は最近のシビックやフィット風になっている。しかし空調吹き出し口やスイッチ等の位置関係は先代とほとんど変わっていない。つまり基本構造や骨格は従来通りであることがうかがえる。
なおアブソルートはご覧のように黒内装&メタル調パネルで、シート形状も多少ホールド性重視。アクセル/ブレーキペダルとフットレストに付くアルミ製プレートもアブソルート専用装備だ。
インターナビに「マルチビューカメラシステム」の装着が可

純正HDDインターナビはナビ操作用のプログレッシブコマンダー込みで33万6000円。TVはワンセグ対応だ。モニターサイズは5年前の先代と同じ8インチのままだが、新型の装着率は初期受注の90%が選択したというほど。その点では先代の比ではないようだ。

このインターナビ装着車には、クルマをあたかも真上から見たようなグランドビューをはじめ、フロント、左右サイド、リアの4方向を映し出す「マルチビューカメラシステム」(8万4000円)を追加装着できる。仕組み的には日産の「アラウンドビューモニター」(2007年にエルグランドで初搭載)と同様、4個の超広角CCDカメラで捉えた前後左右の映像をコンピュターで合成するものだ。真上からのグランドビューは、シフトレバーをリバースに入れた時に、リアビューモニターと一緒に表示する。果たして日産との技術パテントの折り合いがどうかは不明だが、ホンダのものは車速やステアリング舵角などと連動し、予測ガイド線を表示する点が新しい。
セカンドシートは2人掛けメインだが、より広く、見晴らしも良く
燃料タンクの薄型化などで実現した低床・低重心設計は先代譲りだが、新型では主にシート下の構造やシート形状を見直し、セカンド/サードシート乗員の足入れ性やひざまわりのスペースを改善したという。

セカンドシートの中央席を畳んで、大型アームレストとする方法は、1クラス下のストリームにならったもの。先代オデッセイよりサードシートからの見晴らしが良くなり、なおかつ5人乗り(2×3)、6人乗り(2×2×2もしくは2×3×1)、7人乗り(2×3×2)というシーティングの両立が可能だ。
ただしこのおかげで、セカンドシート中央席のシートベルトは3点式ではなく2点式のままで、ヘッドレストも最上級グレード(Li)以外では装備されない。つまりあくまで推奨できるのは2×2×2の6人乗りまでであり、おそらく開発側の本音もそこだろう。中央席をいわば捨てて、左右席(の快適性と安全性)を重視するのは世界的な流れでもある。
最大の進化は、3列目の見晴らしにあり

サードシートはセカンドシートを多少前にずらして足もとスペースを確保し、前述の通りその中央席を畳めば(先代ではこれが出来なかった)、前方見晴らしが効く。やはり先代の閉塞感は不評だったようだが、それを思えば、この点が新型オデッセイ最大の改善ポイントかもしれない。特に見晴らしに関しては、1列目から3列目までのシートをV字型に配したことで(1列目乗員を左右に離し、2列目、3列目乗員をそれぞれ25mmずつ中央に寄せる)、前方視界の改善を図っており、これが確かに効いているようだ。
とはいえ、サードシートに座ると、ことアブソルートに関しては内装が殺風景で、やはり孤絶感を感じてしまう。明るいベージュ内装なら印象は違うと思うので、ファミリーユーザーの方は熟慮されたい。
乗り降りの点では、ドア開口部が狭く、もっぱら体の小さな子供用という感じだ。やはりミニバンというより、ステーションワゴンの荷室にサードシートを入れた、という感じがまったく無くなったわけではない。
いっそない方が良かった「フレキシブルラゲッジボード」

先代で一部に設定された電動収納サードシートは廃止されたが、背もたれを倒した後に180度反転させて床下に収納する歴代オデッセイ伝統の仕組みは踏襲されている。簡単操作で、大人なら誰でも出来るはずだ。

思わず首をかしげてしまうのが、新しく荷室床下に備わった2分割式の「フレキシブルラゲッジボード」だ。取り外すと、裏にアイロン台のような折り畳み式の足が付いており、さては昔のCR-Vのようにテーブルになるのかと思いきや、それにしては足が短い。実はこれ、荷室拡大時にできる溝を埋める「台」になるのだ。
ところがこれの使用方法が実に難しい。まずはボードを2つに分割するのが、これが説明図を見ても分かりにくく、コツも力も要する。取材・撮影という目的がなかったら、おそらく途中で挫折していたと思われるほど。まあ、このまま放っておいても別に支障のないものではあるが。

開発した人には申し訳ないが、結論としてはマークXジオの「デュアルトノボード」(サードシート部分を覆い隠す)脱着作業と並んで、個人的には二度とやりたくない作業。似たようなコンセプトのクルマで、同じような轍を踏んでしまっているのは単なる偶然か。
基本性能&ドライブフィール
スペックやパワー感は先代の延長線上

エンジンは形式名から排気量、ボア・ストまで先代と同一ながら、事実上の全面変更という2.4リッター直4・DOHCの「K24A」型。通常モデル(173ps/6000rpm、22.6kgm/4300rpm)に対して、アブソルート用は使用燃料をハイオクとして圧縮比を11.0にアップ。さらに吸排気系を多少イジッて、33psと1.1kgm増(先代アブソルートに対しては6ps増)の206ps/7000rpm、22.7kgm/4300rpmを発揮する。変速機は先代通り、通常モデルはCVT(もちろんトルコン付)、アブソルートは5ATだ。試乗したのはそのアブソルート。5年前の3代目試乗時と同じ看板グレードだ。
車重は先代とほぼ同じで(むしろ同装備で比較すれば10~20kg軽量になったらしい)、アブソルート(FF)のカタログ値は1630kg、試乗車の車検証記載値で1640kgとなる。パワーウエイトレシオは約8kg/psだ。
そんなわけで、加速感とかパワー感とかは、先代に近いと言ってもいいだろう。ホンダ中・上級モデルで定番の5ATの変速は思わずCVTかと思うほど滑らかだが、これはすでに先代でもそうだった。
新型ではDBW(ドライブバイワイヤー=電子制御スロットル)を採用しているが、発進時にアクセルをちょっと踏むだけで「ドン」と過敏に反応するところはホンダの伝統とも言うべきか。アクセルを踏み抜けばさすがにホンダらしく速いが、基本的にはピークパワーやサウンド云々を語るユニットではなく(少なくともホンダエンジンとしては)、低中速や燃費を重視した実用エンジンと言うべきだろう。
究極の磨きがかかったサスペンション

オデッセイ・アブソルートで光るのはむしろエンジンではなく足まわりだ。そんな傾向は先代アブソルートにもあったが、そのチューニングに磨きが掛かったのは間違いない。ただの磨きではなく、バフ掛けレベルだ。
先代の215/55R17から一回り太くされた225/45R18タイヤ、そして専用スプリング&ダンパーという足まわりだが、低速でもほとんどゴツゴツ感はなく、むしろ小刻みな凹凸をいなす微少なストローク感が気持ちいい。高速道路では凹凸や段差に合わせて、まさに「路面に吸い付く」ように足がしなやかに伸び縮みする。柔らかめのスプリングにオーリンズやビルシュタインで街乗りベストのセッティングをした感じと言えば大げさか。玄人好みであるのと同時に、おそらくクルマに興味のない人が乗っても体感できると思う。
電パワは新開発の「モーションアダプティブEPS」
先代では操舵感にこだわって油圧式とされたパワーステアリングだが、もともと電動パワステの採用には積極的だったホンダゆえ、今回の4代目からはついに電動式へ変更。「油圧にしては軽いな」という以外、その操舵感に電動っぽさはないが、満を侍したのはそのためだけではなく、全車でVSA(いわゆるESP)と協調制御して挙動安定方向にアシストを調整する「モーションアダプティブEPS」となっているのがポイントだ。
これはトヨタでいうところの「S-VSC」のようなもので、その介入もS-VSC同様に微妙であり、あからさまに体感はできないが、某社の開発スタッフは以前「ステアリング制御は(操縦安定性確保に)ものすごく効く」と言っていたから、やはり通常領域からいざという時まで、効く時は効くのだろう。
ステーションワゴンレベルの高速快適性。試乗燃費は8km/L台
100km/h巡航は、5速トップでちょうど2000回転。パワーは十分なので、交通の流れに乗る分にはキックダウンやシフトダウンは不要だ。またマニュアルモード(Sモード)のほか、アブソルートではパドル操作でのマニュアルシフトができる。

速度計の上限域でも走行安定性はまったく不安はない。静粛性についても、多少の風切り音やロードノイズは入ってくるが、音・振で不利なステーションワゴン、もとい「ミニバン」タイプのボディとしては、最上の部類だろう。そもそも、そういった速度域で楽々巡航できるという事実に圧倒される。この点でライバル車を挙げるとするなら普通のミニバンではなく、スバルのレガシィ・ツーリングワゴンかエクシーガあたりだろう。
今回はトータルで約190kmほど試乗。参考までに試乗燃費はいつもの一般道・高速の混じった区間(約90km)で8.1km/L。高速での移動がさらに多かった190kmトータル(撮影時の移動を除く)では8.4km/Lとなった。
なおアブソルート(FF)の10・15モード燃費は11.4km/L。JC08モード燃費は11.0km/L。ただしアブソルートの指定燃料は前述の通りハイオクだ。
ここがイイ
足まわり、視界など

開発コンセプトである「感性クオリティ」を想起させる足まわりのチューニング。過剰すぎないパワー感と相まって、今更ながらミニバンの類とはとても思えない素晴らしい走りが楽しめる。
Aピラーがすごく細くなって、リアルな視界が一気に広がった。また「マルチビューカメラシステム」でバーチャルな視界も広がった。「よく見える」のは素晴らしいこと。
低いところに伸び伸びと広がった、オデッセイ独特のセカンドシート空間。ミニバンでもセダンでもなく、新手のハードトップ風リムジンといった感じ。
デザイン的には一番後方のサイドウインドウ後端を跳ね上げたこと。マークXジオではやらなかった(できなかった)デザイン処理を成し遂げて、ずいぶん個性的になった。
ここがダメ
フレキシブルじゃないボード

言うまでもなく、荷室床下の「フレキシブルラゲッジボード」。不要なら外してしまうか、そのまま放っておけばいい、という判断で(あるいは判断をユーザーに委ねて)採用したのだろうが、もっと単純な機能で良かったと思う。また先代にあったサードシートの電動格納機能も無くなってしまった。先代で装着率が低かったことが直接の理由だろうが、いよいよサードシートを使うことが少ないクルマになったということか。
一部のホンダ車に乗る度に思う、アクセル踏みはじめの過敏な反応。そうしたホンダばかりに乗っているとこれが普通と思えてしまうが、一般他車からすればイレギュラーなセッティングと思う。どうも意図的にこうしてあるようだが、本当にいいと思ってやっているのかどうか真意を問いたいところ。
ダメというほどでもないが、HDDインターナビのプログレッシブコマンダーはタッチパネルより少々慣れが必要であり、また大きな日本語表示がされた周辺スイッチの家電的安っぽさも気になるところ。TVがフルセグではなく、ワンセグというのもどうなのだろう。地図は道路こそ最新のようだが(インターナビで更新もできる)、拡大すると見える詳細施設情報はかなり古い。ネットで詳細な地図を見ることに慣れた昨今、これはちょっと気になる。
売りであるグランドビュー(真上から見た画面)は、チラ見をするには確かに便利だが、これだけを頼りに車庫入れをすると事故が起きそうだ。車庫入れこそ、人間が五感と全身を働かせてクルマを動かす作業としては最後の砦かも。ここをクルマ任せにできるほどの装置とはまだ言えないし、見えない部分が確認できるという、あくまでフォロー的な装置であることをドライバーに向けて強調すべきだろう。
総合評価
乗用車ライクなミニバンから流行の乗り物へ

ホンダ・初代オデッセイ(1994年)
(photo:本田技研工業)
私事で恐縮だが、初代オデッセイが出た当時はミニバンが必要な家族構成だった。ホンダから借りた試乗車に、祖父母や子供を乗せてドライブに出かけたら、皆にとても喜ばれたもの。その頃はワンボックスタイプのミニバンがまだまだ主流だったから、多人数が乗れるのに乗用車ライクな乗り味でもあることに感心した。
2代目に試乗したときにはその走りに驚かされた。広くてゆったり、のんびり走るのがミニバンの生き方ではと思ったものの、一家に一台の場合、走りも楽しめるという事実はお父さん達に相当に訴求したようで、2代目も爆発的に売れた。これでオデッセイは走り屋お父さんのミニバン、男のミニバンというイメージで定着していったわけだ。ただしミニバンなのにこんなに走っていいのか、とその頃すでに思ったことも事実だ。
3代目に至っては走りばかりに話題が集中し、ファミリーな雰囲気は消えて、ミニバンこそ若者のクルマという世相にもフィットして人気を獲得した。怖い顔がちょっぴりヤンキーぽい雰囲気で、地方在住の若者にとってはステイタス車的な地位を獲得したともいえる。つまりオデッセイは3代目ですでにミニバンという立ち位置ではなく「流行の乗り物」になっていた。
元々作りたかったものを実現させた

今回の4代目はその流れをさらに推し進めたものと言えるだろう。流行の乗り物から多人数が乗れる未来型の乗用車となり、もはやミニバンという古くさいものではなくなった。スタイリングも、まさに未来のクルマっぽい。同時にステーションワゴンの復活?とも見うけられる。乗用車ライクで、人も荷物もたくさん載るとなれば、それはステーションワゴンのこと。合理的なこのタイプのクルマは国産車では今やすっかり死滅寸前にあるが、実はオデッセイが密かに復活させたと言ってもいいのではないか。新型のサードシートに座ってみると、昔のステーションワゴンのサードシートのような感覚が確かにある。先代は「ミニバンが進化したもの」という感覚があったが、5年を経て登場した今回のモデルは、先代同様のコンセプトであるにもかかわらず、初めから「ミニバンではないもの」と感じるのだ。

ホンダ・アコードエアロデッキ(1985年)
(photo:本田技研工業)
実はホンダはこの手のクルマを昔から得意としてきた。アコードエアロデッキ、またかつてモーターデイズでイヤーカーだとまで言ったものの、まったく売れずに消えていったアヴァンシアなど。つまりはステーションワゴンのようで、そうでもなく、というクルマをホンダはちょくちょく出してきた。今回はオデッセイという名ではあるが、またそんなクルマを作ったように思えてならない。ミニバン開拓者であったホンダがすでにミニバンに興味をなくしたというより、元々作りたかったものを実現させただけ、ということなのでないか。これこそが乗用車の理想型、未来の乗用車の姿だと主張しているわけだ。コンセプト的にはマークXジオあたりも近いのだが。
マーケティングだけでクルマを作らない

ホンダ・アヴァンシア(1999年)
(photo:本田技研工業)
無用に幅広くなく、それでいて姿勢が低くてかっこよく、よく走って、たくさん乗れて、ハイテク満載で、全体に未来っぽい。ファミリーにはもっと広くて楽しいミニバン(ステップワゴンとか)があるし、でかくて広い豪華ミニバンだってあることを思うと、このクルマはミニバンではなくパーソナルカーだ。「3列シートのパーソナルカー」。それゆえ、ものすごく売れにくいクルマになってしまった。セダン、スポーツカー、ミニバンなどといった既存のジャンルに入らないクルマを、なかなか消費者は買おうとしない。それはこれまでの経験上ホンダ自身も分かっているので、イメージ的に売ろうとカッコいいCMを作ったのだろう。

ただ現実的には、CMのように生活感を感じさせないかっこいい人が乗るならスポーツカーの方がいいし、パーソナルカーとしてならもっと小さいクルマの方が今っぽい。かなり良好とはいえ、燃費だって絶対的にいいわけではない。先代までの勢いで当面は売れるが、販売が先細りになりそうな予感はやはりある。しかしやがて燃料電池車の時代になれば、この手のクルマが主力車種となるはずで、そのための礎として出しておこうというホンダの志は評価したいところだ。エアロデッキもアヴァンシアも、そしてこのオデッセイも、ロボットからジェット機までを作るホンダらしい先進性にあふれている。まあ、イイものというのは残念ながらなかなか世の中に理解されにくいもの。マーケティングだけでクルマを作らないホンダらしさが出た作品だと思う。
作者:
DAYS
http://www.motordays.com/
更新日:2008年11月30日 7時26分
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シトロエン C5 3.0 エクスクルーシブ
キャラクター&開発コンセプト
ミドルクラスサルーン「C5」の2代目

新型シトロエン C5
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)
シトロエンの「C5」は、1970年代のGS/GSA(1970-1986年)、80年代のBX(1982-93年)、90年代のエグザンティア(1993-2001年)の系譜に連なるミドルクラスサルーン。今回の新型C5は、初代(2001年日本発売)から7年ぶりのフルモデルチェンジとなる2代目だ。
デザイン的には2007年9月のフランクフルトショーで発表された4シーターカブリオレのコンセプトカー「C5 エアスケープ(Airscape)」を引き継ぐもの。欧州では2008年1月、日本では2008年10月1日に発売された。
スタイリッシュなデザインは、従来のシトロエン流から一歩踏み出した感のあるもの。そのボディを支えるのは、通称ハイドロ、正式名称「ハイドラクティブIII+(プラス)」サスペンションだ。目指すところは、シトロエン独自の「快適な乗り心地」と「高い走行安定性」である。
価格帯&グレード展開
2リッターは399万円~。3リッターは479万円~
今回導入されたのは先代C5同様、4ドアセダンとステーションワゴンの2種類で、パワートレインも2リッター直4+4ATと3リッターV6+6ATの2種類、計4グレードだ。「2.0」に対して80万円高い「3.0」は、レザーシート(運転席マッサージ機能付)が標準装備となる。
なお、先代C5の「セダン」は実のところ5ドアだったが、新型では固定式リアウィンドウを持つ正真正銘のセダンとなった。セダンにはオプションで電動サンルーフ(14万円)が用意されている。
【セダン】
■「C5 2.0」 2リッター直4(143ps、20.8kgm)+4AT 399万円
■
「C5 3.0 エクスクルーシブ」 3リッターV6(215ps、30.5kgm)+6AT 479万円 ★今週の試乗車
ステーションワゴンは「ツアラー」

新型シトロエン C5 ツアラー
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)
また伝統的にブレーク(Break)と呼ばれてきたステーションワゴンは、今回から新しく「ツアラー」と呼ばれることになった。セダンに比べて20万円高いが、こちらはパノラミックガラスルーフが標準装備となる。
【ツアラー】
■「C5 ツアラー 2.0」 2リッター直4(143ps、20.8kgm)+4AT 419万円
■「C5 ツアラー 3.0 エクスクルーシブ」 3リッターV6(215ps、30.5kgm)+6AT 499万円
パッケージング&スタイル
大きくなったが、小さく見える

セダンのボディサイズ(先代セダン比)は、全長4795(+55)mm×全幅1860(+80)mm×全高1470(+10)mm。ホイールベースは2815mm(先代比+65mm)。数値的には先代よりひとまわり大きくなっている。
なおツアラーのボディサイズ(先代ブレーク比)は、全長4845mm(+5)mm×全幅1860(+80)mm×全高1490(-80)mm。こちらはリアオーバーハング部がセダンより伸ばされ、全高がルーフレールの分高くなっている。こちらは「よりワイドに、より低く」変化している。

ボディカラーは全8色。試乗車のボディカラーは定番の「グリアルミニウム」。ボディパネルの面質が高いせいか、塗装品質も高くみえる
一方、見た目の印象としては、むしろ数字とは逆に先代より引き締まった感じ。初代C5はキャビンに空気を入れて膨らましたような丸々とした空間優先スタイルだったが、新型では4ドアクーペ風に変身。顔はまぎれもなくC4や先代C5後期型で見たことのあるシトロエン顔だが、抑揚のあるプレスライン、シトロエンらしい逆反りリアウインドウ(3次曲面の凹型となっている)といったあたり、見せどころの多いデザインだ。Cd値はセダンで0.29である。
インストと化したステアリング、凝りまくったメーター

内装色はブラック(写真)とライトグレーの2色がある
最近のシトロエンはインテリアの質感も高いが、それ以上にデザインは過剰なくらい凝っている。新型C5でまず目を引くのが、C4やC4ピカソに続いて採用された「センターフィックスステアリング」だ。非回転式センターパッドに無数のボタンを散りばめたもので、数えてみたら左右それぞれに10個ずつ、計20個のスイッチがあり、ほとんどインストルメントパネル状態。これらのスイッチは通常のステアリングスイッチと異なり、リム部分を握ったまま親指での操作がしにくい。リムから手を離して、人差し指で押すのがいいようだ。
なおこの「センターフィックスステアリング」には、舵角に関係なくエアバッグの展開方向を一定にするというメリットもある。

もう一つユニークなのが、「航空機の計器盤に着想を得た」という、アナログ(針式)と液晶デジタルをミックスした3眼メーター。未来的なデザインで、なかなかカッコいい。
が、正直言って視認性は良くない。特に使用頻度の高い速度、回転計、燃料計が一目でパッと目に入ってこないあたり、1日か2日の試乗では最後まで慣れなかった。しかしこのあたりは、同じように視認性の良くない新型フィアット500のメーター同様、目くじらを立てるのは無粋かも。
実はシトロエンもこの点は認識していたようで、ステアリング上のボタンを押すと主要な表示以外ブラックアウトする、サーブ言うところのナイトパネル機能が備わっている。
タイトな室内に、豪華なシート

広々感が何より印象的だった先代C5に対して、新型はFRスポーツセダンのようにタイトな空間に宗旨替え。これには今ではC4ピカソなどのミニバンやCクロッサー(三菱アウトランダーベースの欧州市場向けSUV)といったスペース効率の高い車種が増えたことが背景にあると思う。
電動フロントシートは背もたれに中折れ機構(最大25度)まで備えるなど、立派すぎるほど立派。試乗車(3.0)はレザーシートだったのでフンワリ感はそれほどでもなかったが、とにかくシートへの思い入れやコストのかけ方が他メーカーとは段違いという感じだ。

電子制御パーキングブレーキを、C6、C4ピカソに続いて採用
なお、3.0の運転席シートに付く電動マッサージ機能は、電動ランバーサポートがゆっくりと膨らんだり引っ込んだりするという単純なもの。気休めにはなるが、効果は今ひとつだ。また運転席に関しては、デイズスタッフの中に左腿の圧迫感を訴える声があった。センターコンソールの張り出しがやや大きいようだ。
後席はあくまで2人掛けに特化

スポーティなキャラクターから予想される通り、リアシートは基本的に2人掛けを想定したもの。バケット風の形状とした左右席は、ドアからの圧迫感を軽減するため中央側に寄せている。その結果、中央席はあくまでエマージェンシー扱いで、通常はドリンクホルダー(フロントシートにはなぜか無い!)を内蔵するアームレストのための場所という感じだ。
実際に身長180センチ弱のデイズスタッフが座ると、楽に足が組める、というほどではないが、圧迫感はないようだ。センタートンネルがほとんどないため、両足の置き場が制約を受けないのも効いている。
なお、エアバッグは運転席ニー(膝)エアバッグを含めた計9個。そのうち後席用はサイド×2、カーテン×2である。5人分のシートベルト装着表示灯と警告アラームがあり、これが時々誤作動したが、その警告音まで個性的なのがシトロエンらしい。
5ドアから「本当の」セダンに。トランクスルーすればワゴン並みの積載性

先に触れたように、初代C5セダンは実のところ「5ドア」だったが、今回は本物の4ドアセダン。トランク容量は467リッター。U字型のトランクリッドヒンジが荷室スペースを浸食しているところに「合理性よりデザイン性重視」のスタンスが見える。積載性を重視する人には「ツアラー」があるので、セダンではあえて割り切ったようだ。

とはいえ、ヘッドレストを抜くことなくリアシートを6:4分割のダブルフォールディングで倒せば(操作力は軽い)、ばっちりトランクスルーできる。
なお、「ツアラー」の荷室容量は通常時で505リッター、最大拡大時は1490リッターとなる。さらに電動テールゲート(シトロエン初)や、ハイドロならではの荷物の積み降ろしを助ける荷室高上下調整機能(プラスマイナス6cmの計12cm)も備わるなど、ドイツ系ワゴンに負けないスペックと実用性を確保している。
基本性能&ドライブフィール
パワートレインは先代・後期型をキャリーオーバー

試乗したのはセダンの「3.0 エクスクルーシブ」(479万円)。パワートレインはプジョー・シトロエン車で定番の3リッターV6(215ps、30.5kgm)とアイシンAW製6ATの組み合わせだ。2リッター直4+トルコン4AT(AL4)の「2.0」同様、いずれも従来モデルの改良型キャリーオーバーなので、総じて動力性能やパワー感も先代C5後期型の延長線上にある。しかし少なくともこの3リッターV6と6ATに関しては運転していて気持ちがよく、実用性能と信頼性も成熟期にあるパワートレインだ。
期待通りの乗り心地と静粛性
そんなわけで新型C5に乗る時は、エンジン関係のことはさっさと忘れて、シャシーを味わうことに集中したい。そのサスペンションはもちろん通称「ハイドロ」。窒素ガスと専用オイルをスフィアと呼ばれる鉄球に詰めて(ガスとオイルの間はゴム製の膜で仕切られる)、ガスはスプリングの役目を、オイルは減衰力、車高調整、姿勢制御をつかさどるものだ。新型C5のものは電子制御が加わった最新世代のハイドロで、正式名称はC6と同じ「ハイドラクティブIIIプラス」。先代の「ハイドラクティブIII」の改良型であり、極端な話、基本的な理論は完全機械式だった昔のハイドロサスペンションと同じと言っていいだろう。
その乗り味はひとことで言って「いかにもシトロエン、いかにもハイドロ」。微妙と言えば微妙だが、期待通りのフラット感、路面の凹凸を遠くから伝えてくる独特のコツコツ感、独特の揺らぎがあるドッシリ感などが渾然と混じり合ったものだ。もちろんハイドラクティブIIIプラスにも、姿勢を一定に保つ「セルフレベリング機能」やスイッチで車高を調整できる「ハイトコントロール機能」などが備わる。試乗車は新車からすでに900kmほど走っていたせいか、新車状態のハイドロ・シトロエンにしては、コツコツ感やハーシュネス(突き上げ)が小さかった。
静粛性もそうとうに高い。サイドウインドウに二重ガラスを使ったり、前輪と後輪のホイールハウス内を吸音用フェルトで覆ったりと、遮音対策はラージクラスセダン並みに入念だが、とにかくその静粛性も「独特の疾走感」を盛り上げている。
ワインディングでは強力なライントレース性

ワインディングでも前輪が路面を掻くという感じはなく、前からロープで引っ張られているような強力なライントレース性でもって、滑るように走る。これはハイドロ(姿勢を適度にフラットに保とうとする)はもちろん、1585mmのフロントトレッド(リアトレッドより25mmもワイド)やフロントダブルウィッシュボーンサス、それに245/45R18サイズのミシュランなどの相乗効果だろう。さらにサスペンションを「スポーツ」モードにすると、パワステの手応えや身のこなしが劇的にシャープになる。前後重配分は1120kg:610kg(65:35)とフロントヘビーだが、運転者はそれをほとんど感じない。
試乗燃費は6.7km/L
今回もほぼいつものコースで190kmを試乗。試乗燃費はトータルで6.7km/Lとなった。そのうち一般道を60kmほど、余分な加速を控えて走った区間では8.6km/Lをキープしたが、渋滞や多少の全開加速をまじえれば、7km/L台が現実的だろう。10・15モード燃費は未発表だが、ほぼ同じパワートレインと車重のプジョー407SW 3.0が8.0km/Lなので、まあそのあたりだろう。もちろん指定燃料はハイオクだ。
ここがイイ
独自の乗り味、カッコ、シートなどなど

新車状態で早くも多走行シトロエンの味を出してあること。乗り心地はとにかくフワフワというべきもの。ブレーキをかけて止まると軽く揺れるほど。ブレーキのタッチもカックンブレーキぽくて、なんとなく昔のシトロエンみたいだ。シトロエンとしては十分なパワーで、6速ATのプログラムも先代に引き続き問題なし。速度を問わず軽いパワーステアリングを切り込むと、路面を舐めるように曲がっていくコーナリングフィールはやはり独自かつ素晴らしい。100km/h巡航は2000回転、150km/hで3000回転といったところの、ゆったりと心地よい高速クルージングは絶妙。

シトロエン初?の万人受けするカッコ良さ。若干ドイツ車っぽくもあるが、カッコいいに越したことはない。ベルトーネがデザインしたエグザンティアを思い出させる、「カッコいい中型シトロエン」。それでも細部にシトロエンらしいひねくれ感も残されている。逆ぞりのリアガラスはもちろん、サイドウィンドウを見るとガラス面積より室内側の枠が大きく、室内からはガラスサイズより視界が狭い。これまた他では見られない光景。
体にフィットする大柄なシートは素晴らしい。背もたれの真ん中が折れて角度が変えられるという機能もこのクラスではまず他にない。ちなみに右ハンドル化による左足のスペースはアウディA4ほど狭くはない。

カップホルダーはないが、右下の小物入れに500mlのペットボトルがピタリと収まるので、救われている。またステアリングのグリップ部分にアルミ?が使われているのも独自。ダッシュパネルと同じ素材のようだ。ウッドとは異なり、滑りは革と同じなので違和感がないし、明らかに革部分とは触れた時の温度が違うので運転中はヒヤッと刺激になっていい。センター固定パッドゆえ、ステアリングを横着に逆手で回すと引っかかるから、きれいなハンドル操作を心がけることになりそう。メーターも枠の部分だけで針が回るタイプなので、軸がないからメーター真ん中をディスプレイにできるのがいい。

(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)
相変わらずAFS(ディレクショナルヘッドライト)とコーナーリングライトは便利。高速コーナーから住宅街の交差点まで、曲がり角の向こうを見事に照らしてくれる。
ここがダメ
ドリンクホルダーやカーナビの不備
まったく細かい話だが、信じられないことに今時のクルマで、フロントシートにドリンクホルダーが無いこと(先代もそう)。それにこれもシトロエンならではの美学かもしれないが、現実問題として困る機会は多そう。確かにキャップの付いた500㎜ペットボトルを斜めに放り込めるスペースはあるし、アームレスト部の収納がその代用とはなるが、そもそもリアシートにはあるのにフロントにないというのが変。そのリアアームレストのカップホルダーも浅くて小さいので、500mlペットボトルが主流の日本では使い勝手が悪そうだ。

ライバル各車はもちろん、C6もインパネと一体になったカーナビを用意しているが、C5にはなく、またこのダッシュ形状ではいかんともしがたい。オプションではダッシュ中央小物入れにセットする地デジ付きカロッツェリア(28万8750円)があるが、選択肢は事実上これだけ。しかもいかにも後付け風。こうなるとPNDを取り付けたいところだが、先代C5ではフロントスクリーンの電波通過状況が芳しくなかった。今度ははたして。いっそメーター内ディスプレイにPNDを埋め込んで欲しいくらいだ。そのインフォメーションディスプレイも外国語表示のみで、今ひとつわかりにくい。
もう一つは、オーディオの使い勝手といまいちの音。静粛性の高いこの移動空間を楽しむなら、マニアならずともオーディオのグレードアップがしたくなるのでは。オプションのUSBコネクタが3万1500円もするというのも、ちょっとどうかと思う。
絶妙のシートもマッサージ機能ばかりは不要であるとしか言えない。それよりクーリング機能が欲しい。リアシートは大柄な人がきっちり座るとピタリとくるシートで、小柄な人がもうちょっとゆったりできるといい。またV6にもファブリックのシートが欲しい。革しか選べないのは残念。またこれは個体の問題だったかも知れないが、荒れた路面になると右フロントあたりから結構大きめのロードノイズが伝わってきたのはちょっと気になったところ。
総合評価
トヨタiQとシトロエンC5
C5はCOTYのインポートカー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。国産車はiQで、これに関しては色々難しい話?もあるようだが、C5に関しては衆目の一致するところだったのだろう。モーターデイズとしてもC5はまさにイヤーカーにふさわしいと思う。こんな個性的なクルマは他に見あたらないからだ。それでいてシトロエンらしからぬ仕上がりの良さも。

しかし欧州メーカーにとって主戦場ともいうべきDセグメントに、無難な、ではなく、かなり、いや相当に個性的な味を持たせたモデルを投入するなど、おおよそ90年の伝統を持つシトロエンでなければ出来ないことかもしれない。マイクロカーやハイブリッドというような悪くいえばギミックではなく、ごくスタンダードな内燃機関を持ったセダンとして「うちの味」を強烈に打ち出しているわけで、しかもそれを伝統の味で押し通せるところがシトロエンの強みだ。そういえば2年前にもCOTYはシトロエンC6をインポートカー・オブ・ザ・イヤーにしている。またまたシトロエンが選ばれたことで、難しい話?は関係なく、素直にいいから選ばれた、と考えてよさそうか。
いきなり余談だが、朝日新聞にはC5の受賞記念全面広告が掲載されていたが、名古屋の中日新聞(中部でのシェア80%ともいわれる)には小さな広告すら掲載されていなかった。同じ日の中日にはiQの受賞全面広告があっただけに、C5も並んで載ればインパクト強烈だったのにと、残念至極。中部には関東に勝るとも劣らない数のシトロエンディーラーがあるゆえ、ここはちょっと検討の余地はあっただろうと思う。
新車からシトロエンの味
話を戻してそのスタイリング。確かにドイツ車っぽいが、それでもかなり変な部分は多い。インテリアや操作系などはやっぱり変(というか独自)。シートは絶妙、乗り心地は独自かつ絶妙というあたりまで、成り立ちすべてがシトロエンの伝統どおり。旧来のシトロエンファンには十二分に受け入れられる作りだろう。しかも、最近のクルマはどれも同じようだと思っている人でも、乗ってみると確実にこれはちょっと違うと分かるという点で、C5には競争力がある(まあ勝てるかどうかは別だが)。要は没個性化しつつあるセダンで明確な差別化を行ったわけで、これを刺激として各社のクルマがより個性化することをクルマ好きとしては期待してしまう。クルマ好きが欧州車を好きだったのは、明らかに各社に違いがあったからで、最近は何となくどれも似たようなテイストになっていたことが、クルマ離れに拍車をかけていたと思うからだ。

何よりC5に重要なのはこうした「味」が新車時から発揮されていることだろう。デビューした頃のC6が今ひとつの評価になってしまったのは、新車では足が硬めに感じてしまったから。しかしハイドロは数千km走ると激変するはず。C6もたぶんその状態で乗ると、大きく評価が変わると思う。ところがC5は新車(試乗車は走行900㎞ほど)でも十分ハイドロの味を出している。これはもう確信犯的にそう作られているのだろう。工業製品である以上、新品状態が一番いいのが普通で、だんだんよくなるという工業製品は本来あり得ない。まあそれをやっていたのがシトロエンで、それゆえファンも付いたのだが。先代後期モデル同様、新型C5は「新車からシトロエンの味」だ。例えばC4ピカソなどはハイドロでないにもかかわらず、かなりシトロエンらしい乗り心地だった。C5も本国には金属サスのモデルがあるようだが、それもたぶんそうとうシトロエンの味になっていると思う。
マニアとしてはやはりハイドロが欲しい
C5を全面的に支持しづらい部分があるとすれば、それは全長4795mm×全幅1860mm×全高1470mmというサイズだろう。Dセグとはいえ、かなりでかい。サイズ的には全長が115mm違うくらいのC6(全長4910mm×全幅1860mm×全高1465mm)があるのだから、ここまで大きくしなくてもよかったんじゃないか、と誰もが思うはず。例えばメルセデスのC200と比べると全長で210㎜、全幅で90㎜も大きいし、大きくなったと言われるアウディA4より幅は35㎜も広い。ダウンサイジングの昨今、「ハイドロは欲しいが、ここまで大きなセダンはちょっと」という人は多いのでは。サイズがたいして変わらないなら、スタイリング的によりシトロエンらしいC6も欲しくなる。今売られているC6であれば、乗り心地はかなり改善されているはずだし。

思い起こせば、日本で一番売れたハイドロ車であるシトロエンBXは、C5より全長で565mm、全幅では200mmも小さかった。全長は今でいえばC4くらい。ハイドロを使わないC4もかなりシトロエンの味が出ているが、マニアとしてはやはりハイドロが欲しい。コスト面で厳しいのはわかるが、小さな、そしてより個性的なスタイリングのハイドロ車をぜひ開発してもらいたいものだ。
ところで去る2008年11月15日に、名古屋の、いや中部のシトロエンマニアにとって父とも呼ぶべき人、渡辺自動車の渡邉剛 名誉会長が亡くなられた。シトロエン整備の巨匠であるこの方がいたおかげで、名古屋のシトロエン濃度は日本で一番といえるほど濃くなったのだ。会長がこの出来のC5に乗られたら、たぶん喜んでいただけたと思う。謹んでご冥福をお祈りしたい。
作者:
DAYS
http://www.motordays.com/
更新日:2008年11月23日 10時40分
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フォルクスワーゲン ティグアン トラック&フィールド
キャラクター&開発コンセプト
ゴルフ/パサートベースの本格コンパクトSUV

今回導入されたティグアン 「トラック&フィールド」
(photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
2007年9月のフランクフルトショーでデビュー、2008年9月30日に日本で発売された「ティグアン」は、ゴルフとパサートをベースに開発された5人乗りのコンパクトSUV。全長4.5メートル未満のコンパクトなボディ、ワゴンのような室内空間や積載性、2リッター直噴ターボ+6速AT+フルタイム4WDによるオンロード/オフロード共に優れた走行性能などを特徴としたファミリーカーでもある。
車名はドイツ語の虎(
Tiger)とイグアナ(英語ではIguana、ドイツ語ではLe
guan)からなる造語。「躍動的でダイナミックな虎と力強くタフなイグアナのイメージ」というのが理由だ。
欧州では好調なスタート
欧州では2007年末にデビューし、3週間で4万台以上を受注。ドイツでは翌2008年1月から7月まで、7ヶ月連続でSUVセグメントの販売ナンバー1となったという。日本でも発売後わずか1ヶ月で1000台を受注するなど好調なようだ。生産はトゥーランと同じ、ドイツ・ウォルフスブルグの「Auto 5000 Gmbh」で行われる。
■
フォルクスワーゲン グループ ジャパン>プレスリリース>新型「ティグアン」を発売(2008年9月3日)
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フォルクスワーゲン グループ ジャパン>プレスリリース>「ティグアン」 発売1ヶ月で受注1000台突破(2008年10月28日)
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http://www.auto5000.de/(ドイツ語)
価格帯&グレード展開
ひとまず360万円のモノグレードでスタート

今回発売されたモデルは、ロード&トラックならぬ、「トラック&フィールド」というグレード1種類のみ。エンジンはVWアウディ車でおなじみの2リッター直噴ターボ(最高出力は170psに抑えてある)。変速機はDSGではなく、6速トルコンATを採用。駆動方式は全車、VW車では「4MOTION」と呼ばれる電子制御フルタイム4WDとなる。バイキセノンヘッドライトとリヤビューカメラは標準装備だ。
なお、2009年中頃には、同じ2リッター直噴ターボを200psに高めて(というか本来の出力に戻して)、17インチホイールやスポーツシートを装着するなど内外装をスポーティに仕立てたティグアン「スポーツ&スタイル」が導入される予定だ。
【 2リッター直噴ターボ(170ps)】
■
ティグアン トラック&フィールド 360万円 ★今週の試乗車
【 2リッター直噴ターボ(200ps)】
■ティグアン スポーツ&スタイル ※2009年中頃に発売予定
地デジ付HDDナビやETC等のセットは27万3000円
またメーカーオプションとして、新型HDDナビゲーションシステム「RNS 510」、地デジTV、ETC等のセットオプションも27万3000円で用意されている。
ボディカラーは全6色で、初期受注の1番人気はキャンディホワイト (45%) 、次が今回の試乗車と同じディープブラック パール エフェクト (40%) だそうだ。
パッケージング&スタイル
ゴルフというよりトゥーランに近い

ボディサイズは全長4460mm×全幅1810mm×全高1690mm(ナビ付の試乗車の場合、全高は1710mm)。印象としては全長が短く、輸入SUVにしては幅もそこそこ。見た目にゴルフやパサートの面影はないが、コンパクトさはゴルフ譲りと言うか、むしろそれをベースにした7人乗りミニバンのトゥーランに限りなく近い。日本車で言えば、トヨタRAV4、日産デュアリス、ホンダCR-Vとどっこいどっこいのサイズ感だ。

(photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
プレス資料によると、ティグアンのボディは「フロントセクションからセンターアッパーボディまでがパサート、リアセクションはゴルフ」だが、ホイールベースがパサート(2710mm)より断然短く、トゥーラン(2675mm)とゴルフ(2575mm)の中間あたりの2605mmであることや、生産拠点がトゥーランと同じであることを考えると、構造的にはトゥーランも縁遠からず、とも思える。
ちょっとだけ脱VW的なインテリア

内装の質感はゴルフというより、その上級車であるパサートレベルだが、デザインはほぼ全面的にティグアン専用となっている。ダッシュボードのメタル調パネルに配された計8個もの空調吹き出し口、スポーツカー風にスロープ状となったドアアームレストなど、フォルクスワーゲンの従来イメージとは異なる意匠があちこちに見られる。メーター類や操作系などの機能パーツは、これまでのVW車通りだ。

視点と着座位置がゴルフやパサートより高まっており、ドライビングポジションはかなりアップライトに変化している。シートは生地の模様こそちょっぴりポップだが、座り心地はゴルフと似たようなもの。リクライナーも相変わらずダイアル式で、仮眠をとるときは少々面倒。助手席の方はレバーで倒すことができる。
パサート譲りの電子制御パーキングブレーキを採用

パサートに続いて電子制御パーキングブレーキを採用しているのもティグアンの特徴。これは欧州でデビューしている5代目ゴルフには採用されていないもので、上級車の証と言えようか? 「オートモード」ではアクセルを踏むと自動で解除、パーキングに入れると自動で掛かる。作動時には「ヒュウゥン」とアクチュエーター(たぶん)の音が聞こえてメカメカしい。
オプションのHDDナビも特典多数。リアビューカメラを標準

メーカーセットオプションのHDDナビゲーションシステム「RNS 510」はタッチパネル式だが、オーディオ操作の一部はステアリングスイッチでも可能だ。加えて、最近のアウディ車のように「停まると映る」地デジのTV画面も楽しめる(国産車では未だに地デジチューナーはオプションであることが多い)。さらにこれらとセットで、ETC車載器がセンターコンソールにビルトインで装着されると聞けば、PNDが席巻しつつあるとはいえ、「ええい、メーカーオプションで付けてしまえ」となることが多いだろう。さすが輸入車大手のVW。商売上手だ。価格はiPodやUSB接続デバイスも込みで、27万3000円である。
なお後退時にトヨタ車のようなガイド線が表示されリアビューカメラは標準装備。要するに液晶モニター自体は最初から存在するわけで、その意味でも「RNS 510」をついでに装着してしまうケースが多そうだ。
ミニバンのトゥーラン、SUVのティグアン

リアシートも着座位置が大幅に上がり、姿勢はアップライトだ。空間的にはトゥーランの2列目までに近いと言っていいかもしれない。ただし3列シートミニバンであるトゥーランの後席は、完全に3分割のシートで、形状はやや平板であり、ドア開口部も広い。一方、ティグアンの後席は2人掛け優先で、形状はホールド感のあるもの。また、左右別々に前後スライドができる。このあたりはキャラクターが違う2車で、意図的に変えたものだろう。
100Vコンセントも標準装備

この後席まわりには、ファミリカーらしい便利装備がいろいろ付いている。欧州車が好きなシートバックの折り畳み式テーブル、中央席を倒して使うドリンクホルダー付き大型センターアームレストなどはまあ想定内として、足下センターコンソールに備わるDC12V電源とAC100V電源コンセント(150W)がいかにも便利そうだ。

また天井を見上げれば、まるでアメリカンミニバンのような4連の小物収納スペースがある。位置が前席と後席の間くらいで、どちらからも手が届きにくいのが何だが、このあたり北米市場をけっこう意識しているのかもしれない。
後席乗員のプロテクションとしては、ゴルフ同様にカーテンエアバッグとリヤサイドエアバッグが標準装備される。前席用も合わせて計8エアバッグだ。
座面沈み込みタイプのシングルフォールディングを採用

荷室容量は5人乗車時で470L。リアシートを畳んだ状態で、最大1510Lだ。撮影時にはうっかり忘れてしまったが、助手席の背もたれを前に倒せば、長尺物も積める。床下にはテンパー式のスペアタイヤが収まる。

なお、リアシートの折り畳みはダブルフォールディングではなく、背もたれを倒すと同時に座面が沈み込むシングルフォールディング。VW車では珍しい。なおゴルフの場合は、背もたれが倒れるだけの単純なシングルフォールディング、パサートは定番のダブルフォールディング、トゥーランは3分割のタンブルフォールディングと三者三様ならぬ、四車四様となっている。ティグアンはヘッドレストを付けたままでよく、操作は一番簡単だ。
基本性能&ドライブフィール
おなじみ2リッター直噴ターボは170psの低圧バージョン

ティグアンに搭載されるエンジンは、アウディVWでおなじみの2リッター直4・直噴ターボエンジン。ゴルフGTIやアウディTT、A4あたりだと200psを発揮するエンジンだが、今回発売されたグレード「トラック&フィールド」では、170ps/4300-6000rpm、28.6kgm/1700-4200rpmと幅広い回転域で一定の力をキープするように、出力制御されている。もちろん、どちらかと言えば低回転域重視だ。最高速はメーカー発表値(ドイツ仕様、6AT)で197km/h、0-100km/h加速は9.9秒だ。これはゴルフのTSIトレンドライン(122ps)やトゥーランのTSIトレンドライン(140ps)と同等のパフォーマンスだ。
トルコンATならではの良さは健在
変速機はDSGではなく、このクラスの新型VWでは珍しい6速トルコンATを採用。初めてこれを聞いたときは意外だと思ったが、オフロード走行を想定するとDSGよりトルコンATの方が相性がいいようだ。
DSGのダイレクトなレスポンスに慣れてしまった今、6ATはちょっとかったるいかも、と思いながら走り出したが、実際のところそんなことはまったくなく、むしろ変速スピードは心なしかDSG風にスパッスパッと素早くて「DSGじゃなくてもいいじゃん」と思えてくる。もともとVWアウディの6AT(従来と同じならアイシンAW製のはず)はシャキシャキかつ滑らかに変速するトランスミッションだ。
しかも発進時に強めのクリープがあり、坂道発進でコツを要しない点は、トルコンの古き良きメリット。DSGにも電子制御クラッチで疑似クリープはあるが、やっぱり弱めだし、ヒルホルダーにも慣れが要るから、この点では確かにより無難と言える。
車高を上げたゴルフという感じ
リアサスペンションは、パサートの4MOTION用をベースに、スプリング、ダンパー、スタビライザーを専用設計としたもの。オフロード走行に備えて、サブフレームはパサートのアルミ製からスチール製に変更されている。フロントのロアーアームとサブフレームはアルミ製だ。
で、実際に走ってみると、サスペンションはいかにもVWらしく硬め。印象としては、ゴルフの車高をそのまま上げただけ、という感じだ。タイヤは215/65R16とサイズは普通だが、M+S(いわゆるマッド&スノーもしくはオールシーズン)ではなくサマータイヤ(ブリヂストンのDueler H/P Sport )なので、ダラダラとアンダーステアが出ることはなく、キュッ、キュッと小気味よくノーズがインに向く。さらに調子に乗って姿勢変化を誘うと、ツツッとリアが流れて一気に向きが変わるところは、今のゴルフそのものだ。このクラスのSUVとしては、最もスポーティなハンドリングと思われる。
【悪路走破性 その1】第4世代ハルデックスで、43度の登坂も可

(photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
ティグアンが売りとする悪路走破性にも少し触れておく。カタログでは「最大43度の急斜面を駆け上がる」と豪語しているが、このクラスのSUVでこんな崖のような急勾配の登坂性能を可能としているのは、そのフルタイム4WDシステムに使われるハルデックスの電子制御多板クラッチが最新の第4世代に進化したことが最大の要因だ。
従来のハルデックス電子制御4WDは、前後輪の回転差で作動する機械式ポンプでクラッチ制御用の油圧を発生させていた関係上、回転差が生じてから受動的に後輪への駆動力配分を行う(クラッチを圧着する)傾向が強かったという。同じフルタイム4WDでも、いわゆるトルク感応式センターデフのそれに比べて、勾配のある極悪路でスタックしやすいと評されたのはこれが一因だろう。
今回の新型ハルデックスカップリングは、電動ポンプで油圧を発生させる電子制御油圧式となって格段にレスポンスが良くなり、しかも駆動力の伝達配分を回転差に関係なく能動的に行えるようになったという。例えば発進直後に前後の駆動力配分の0:100とするなど、先読みして駆動力配分を行うことが可能になったようだ。
【悪路走破性 その2】「OFF ROAD」モード、十分な対地クリアランス

(photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
ボタン一つで各種機能がオフロード走行用モードに切り替わる「OFF ROAD」モードも標準装備されている。その内容は、アクセルペダル踏み始めレスポンスのマイルド化、ABS制御の変更、電子制御のデフロック機能(EDS)の介入タイミングの早期化など。今やSUVに必須のヒルディセントコントロールは、このモードの作動中、特定の条件(速度20km/h以下、20%以上の下り勾配、アクセルおよびブレーキペダル操作なし)で、自動的に働く。
また、ティグアン独特のスタイリングは、ちゃんと対地クリアランス(走破アングル)の確保にも役立っている。アプローチアングルは28度、ランプブレークオーバーアングルは20度、ディパーチャーアングルは25度、最低地上高は170mm。FFベースのSUVとしては、かなりアゴが地面に接触しにくい形状となっている。
試乗燃費は7km/L台。10・15モードは9.7km/L
あくまで参考ではあるが、試乗燃費は高速・一般道が混ざったいつもの区間(約90km)で7.3km/L。さらに撮影等の移動を除いたトータル約190kmの試乗で、7.8km/Lとなった。低回転のトルクを丁寧に引き出して走れば8km/L台キープも可能だが、一般的な乗り方ではやはり7km/L台が目安と思われた。10・15モード燃費は9.7km/L。もちろんハイオク指定となる。
ここがイイ
適度なサイズ、高い走破性、充実した装備

ちょっとプレミアム感のあるクルマとしては適度なサイズ。これ以上大きいと、プレミアム度は増すが、使いづらい。逆に小さいと、SUVの場合はプレミアム度が落ちてしまう。また内容に比しての価格は、かなりお値打ち感がある。ちょっと背伸びをすれば手が届くという意味で、どうせ買うなら、という気分になれる(させられてしまう)。価格が安いということは値落ち幅も高額車より少ないということだし、サイズが手頃で価格も手ごろとなれば、確かに売れるクルマの第一条件を満たしている。
その上で、単なる生活四駆的なものではなく、オフロード走破性をしっかり確保したと思われる電子制御フルタイム4WDシステム。オフロード試乗はしていないが、主張するとおりの能力があれば、本格的なオフロードコースに挑戦でもしない限り、不満は出ないだろう。釣りで河原に降りたり、林道を軽く走ったりする分には十二分だ。ゴルフなどと共通する「しっかりしたクルマ」感、ドイツ車らしい「かっちりとした室内」の質感といったあたり、お買い得感が高い。
装備もいい。電子制御パーキングブレーキ、バイキセノンヘッドライト、車速と舵角連動のコーナリングライト、リヤビューカメラを完備し、さらにメーカーオプションとしてインテリアに溶け込んだ地デジ付のHDDナビやETCを用意している。リアのテーブルやら100Vコンセントやら、オーディオのUSB端子やらという、日本車にもぜひ欲しいユーティリティもきっちり用意されている。左フェンダーに例の補助ミラーがないということは、助手席側の見切りもいいということか。
ここがダメ

リアビューカメラのモニター画面が小さくて見にくいこと。液晶モニターの右側が、モード設定用のメニュー(ガイド線を並列駐車か縦列駐車か選べる)用タッチスイッチに使われているせいだが、正直言ってこのガイド線、トヨタのものも含めて必須というほどではない。だから少なくともこの場合は、液晶モニター一杯を使ってリアビューを映すべきだと思う。またオプションの新型ナビは操作自体にやや慣れを要した。
オンロードの楽しさは、例えばゴルフなどより劣る。もちろんオフロード性能や室内空間とのトレードオフではあるが。そのための追加モデルが来年にも投入されるので、オンロードでの走り重視の人はそれの発売を待つべきだろう。
総合評価
VWのイメージはSUVによく似合う

最近のフォルクスワーゲン車(というよりポルシェグループ車)の出来が妙にいいことは、ここしばらくの試乗記で書いてきたが、またまたイイものが出てきてしまった。このティグアンも「よくできました」と言うしかない。実用車として使いやすいサイズで、オフロードが本格的に走れて、オンロードでもそこそこ楽しい、となれば、マルチユースという意味でゴルフをも超える存在と言える。
また価格が比較的安いのも素晴らしいところ。ドイツで売れているのは当然として、日本で9月末の発売以来一ヶ月で1000台を受注したというのは、自動車販売の大不況下においては素晴らしい成績だ。
日産エクストレイルのところでも書いた通り、この手のコンパクトSUVは「アクティブ系オヤジの足」だ。しかしいわゆる高級SUVはアクティブに使うには上品すぎる。といってCR-Vなど国産コンパクトSUVでは、プレミアム感が不足する、という意味で、ディグアンはまさに当たり役。日本でのVWブランドの立ち位置は、イヤミに高級すぎず、しかしプレミアム感は維持しつつ、というあたりだと思うからだ。質実剛健なフォルクスワーゲンのイメージはSUVにはよく似合うし、効果的に流されたTVコマーシャルも認知度を高めた。「フォルクスワーゲン・ダス・アオト」というCMのラストに流れるドイツ語は、日本人の親ドイツDNAに響き渡ったのでは。英語より断然かっこよく聞こえた。
もちろんSUVにはオヤジばかりでなく、20代、30代の男性や女性からも人気を得られるはず。となると、かなり広いユーザー層を獲得できる。また360万円という価格はゴルフ・ヴァリアント 2.0TSI スポーツライン(340万円)と20万円しか違わない。オンロードの走りでは絶対的にヴァリアントをおすすめするが、マルチな性能、そして新しさという意味ではティグアンだ。
ライバル車は身内にしかない?
他の輸入SUVとの比較でも、BMWのX3は570万円もするし、ジープ・パトリオットは296万円と安いが、キャラクターがかなり異なる。国産プレミアムSUVならトヨタのハリアーやヴァンガード、日産ムラーノあたりが価格的には近いが、サイズがちょっと大きい。こうなるとモデル末期となるゴルフに代わって、フォルクスワーゲンの中では今後しばらく最量販モデルとなっていってもおかしくないくらいだろう。サイズ的に近い他の国産SUVは、ティグアン並みのオフ性能を持たないことが多いから(エスクードなどは例外だが)、実にいいところを突いたクルマ、といえそうだ。

ただ「オフロード性能などまったく必要ない」という人は、モデル末期で完成度が頂点に達したゴルフやゴルフ・ヴァリアントの方が幸福感は高いはず。必要もないのに10・15モード燃費ですら9.7km/Lのクルマに乗ることはない。10・15モードで15.4km/L、実燃費で10km/L以上走るゴルフTSIトレンドラインのような、もっと日常的に楽しいクルマがあるのだから。
作者:
DAYS
http://www.motordays.com/
更新日:2008年11月14日 13時41分
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日産 ムラーノ 350XV Four
キャラクター&開発コンセプト
北米主体から、グローバルモデルへ
2008年9月29日に発売された新型ムラーノは、日産の高級クロスオーバーSUV。北米では2002年に、日本では2004年に発売された初代に続く2代目だ。
初代ムラーノはそもそも米国市場をターゲットにしたもので、累計販売台数の50万台のうち42万台は米国での実績。一方、新型は最初からグローバルモデルとして開発。販売エリアも日・米・欧をはじめ「最終的に」約80ヶ国となった初代に対して、2代目は最初から170ヶ国で計画。北米ではすでに1月から発売されているが、今後は他地域へも展開される予定だ。
ティアナと同じDプラットフォームを採用

写真は新型のテーマカラーでもある新色「グレイッシュブロンズ」
シャシーは新型ティアナ等と同じ新世代の「D-プラットフォーム」をベースとしたもの。エンジンは改良型の3.5リッターV6と2.5リッター直4だ。直4の方は従来の4ATに代えてCVTとなり、燃費性能の向上を図っている。V6は初代からCVTだった。
生産は海外向けも合わせて、初代同様に日産の九州工場で行われる。国内の販売目標台数は月間900台。初代は月間1000台が目標だった。
■
日産自動車>プレスリリース>新型「ムラーノ」を発売(2008年9月29日)
価格帯&グレード展開
全車4WDで2.5Lが315万円~、3.5Lが362万2500円~

V6と直4それぞれに「XV」と「XL」の2グレードが設定され、計4グレード。排気量が違っても、同じグレード名なら装備や仕様はほとんど同じだ。
「XV」と「XL」の装備差は、電動レザーシート、スタイリッシュガラスルーフ、ルーフレール等の有無で、価格差は42万円。サイドブラインドモニターとバックビューモニターは全車標準だが、カーウイングスナビは全車オプションとなる。
【VQ35DE(260ps、34.3kgm)+エクストロニックCVT-M6】
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350XV FOUR 404万2500円 ★今週の試乗車
■350XL FOUR 362万2500円
【QR25DE(170ps、25.0kgm)+エクストロニックCVT】
■250XV FOUR 357万円
■250XL FOUR 315万円
パッケージング&スタイル
ちょっと甲虫風? アメリカンからコスモポリタンに

デザインテーマは先代と同じ「SHIFT_design」(デザインをシフトする)だが、印象は新旧でけっこう違う。ヘッドライトとグリルは一体型となり、リアコンビランプはハッチゲート両脇に伸びる奇抜な縦長タイプから、デュアリスに似た横長タイプ(LED式)に変更。前後フェンダーは初代のホイールを強調したものから、パネル全体で膨らんだ上品なものとなった。

初代ムラーノ(2004~2008年)
全体としては、ちょっと甲虫っぽい?感もあるが、初代のアメリカンに対して、新型はヨーロピアンとかコスモポリタン(全世界的な)という印象だ。
一方で、こうした表面的な意匠を抜きにして眺めると、初代と2代目のシルエットは実はそっくりで、特徴的なサイドウインドウのグラフィックスもほぼ踏襲。つまり「変わった」のは、あくまで表面のデザイン処理が主とも言える。
ボディサイズは大差なし

ボディカラーは全7色で、小キズなら自然に復元するというスクラッチシールド塗装。試乗車のボディカラーは「ボルドーレッド」
ボディサイズ(先代比、いずれもルーフレール付)は、全長4825(+55)mm×全幅1895(+15)mm×全高1730(+25)mm。全体に少しずつ大きくなったが、主な要因は歩行者衝突安全性やデザインなどで、根本的なパッケージは変わっていない。ホイールベースも先代と同じ2825mmだ。
デザインに品質が追い付いた。装備も充実

先代のインパネデザインは当時の日産らしく、いかにも「デザインをシフト」したものだったが、コンセプトカー風の生煮え感もちょっとあって、高級感や質感にはちょっと乏しかった。
新型ムラーノでは、そのあたりをしっかり修正。小技の効いたデザインに質感が完全に追いついている。センターコンソールやドアトリムのシルバー部分も、本物のアルミ製を採用。このクラスの国産車でここまで素材にこだわる例は少ない。価格以上の高級感と言っていいだろう。
カーウイングを始め、各種スイッチ類の質感もすっかり洗練された。先代はシフトレバーが幅広いセンターコンソールの左側にあるなど、左ハンドル仕様のままだったが、新型はちゃんと右側に配置し直している。数字が小さくて読みにくいのは残念だが、平均燃費などの情報表示も充実している。最近の日産車でいいのは、情報モニターのモード切替が、ステアリングホイールの外から出来る点だ。

窓からの視界は良好で、左サイドや後方のモニターも全車標準装備。これはもちろん例のフェンダーミラー装着を回避する意味もある。ステアリングはチルト(角度調整)およびテレスコピック(伸縮)がそれぞれ独立したレバーで調整可能。これはオプションで電動にもできる。いずれにしてもドライビングポジションは思いのままに調整可能だ。
「XL」グレードのスエード調が気持ちいい

米国ではミドルクラスと言われてしまうムラーノだが、全幅約1.9メートル、全高1.7メートル超、ホイールベース2.8メートル超という外寸ゆえ、後席が狭いはずはない。乗り降りも楽だし、足下のフロアも真っ平ら。高級セダンの後席に乗り慣れた人でも、超高速走行時を除けば「こっちがいい」と思うはずだ。
また、今や日産のお家芸(ルノー伝来?)とも言うべきシートの座り心地は絶妙。試乗したレザー仕様ももちろん悪くないが、特に「XL」グレードのファブリック(スエード調トリコット)なら、そのフカフカ感がより堪能できる。これでオットマンがあれば高級ミニバンの後席も怖くない?

天井には「外から見るとガラスルーフだが、実はダブルサンルーフ」というティアナと同じ「スタイリッシュガラスルーフ」が「XV」グレードに装備される。絶対的なガラス面積では一枚モノのガラスルーフに劣るが、天窓のようなデザインや前側が電動で開くところがこれのメリットだ。
エアバッグは前席フロント×2、前席サイド×2、そして前・後席のカーテンエアバッグ×2の計6個。当然ながら後席には自立式アンカー付きの3点式シートベルトが3人分備わる。
後席背もたれの「電動復帰」をオプションで用意

ラゲッジルームでは、バネ仕掛けでワンタッチで床から立ち上がる「ラゲッジ分割機構」が面白い。ボルボ車でも以前から見られるような、荷物の転がり防止用ボードだが、ムラーノのものは左右への転がりを防ぐネットが付いている。
通常時の荷室容量は402L。フロア地上高は高めだが、やはり通常の買い物程度ならこれくらいの高さが使いやすいかも。樹脂製バックドアの操作感は軽く、開け閉めがイヤにならない。床下にはテンパースペアタイヤがある。

もう一つ面白いのが、後席の背もたれを荷室側からレバー操作で倒した後、今度は逆にスイッチ一つで戻せる「電動復帰」機能が用意されたことだ(電動バックドアと合わせたセットオプション)。これはバネ仕掛けでは無理で、電動となっている。サードシートの電動化はすでに珍しくないが、セカンドシートのそれは珍しい(国内では初か)。ただし背もたれのリクライニングは手動のままだ。
基本性能&ドライブフィール
パワートレインは熟成進化型(350の場合)
試乗車は最上級グレードの「350XV Four」。おなじみVQ35DE(260ps、34.3kgm)と改良型エクストロニックCVTを搭載する仕様で、車重は1850kgだ。

ちょうど4年前にモーターデイズで試乗した先代ムラーノも、実は同じ「350XV Four」。VQ35DE(231ps、34.0kgm)とCVTという組み合わせも同じで、車重もスタイリッシュガラスルーフ無しで比較すると20kgしか増えていない。
と、そんなことは知らずに乗っても、走らせた印象はけっこう先代に近い。アダプティブシフトコントロール(ASC)などの採用により、エンジンとCVTの協調性を改善したとのことだが、出足が穏やかなところ、アメリカンSUV風にゆったりとしたボディの動きなどは、先代の延長線上にある。出足や坂道発進時にCVTのスリップ感が強く出るところも意図的と思われるが、先代をよりスムーズにした、という感じだ。VQ35DE独特の低いエンジン音は伝わってくるが、総じて静粛性は高いと思う。
基本的なハンドリングは従来通り
4年前の初代と同