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トップ > マツダ CX-7 > マツダ CX-7 - 人気ブログ(Blog)検索結果詳細 (2008年11月21日 10時)

フォルクスワーゲン ティグアン トラック&フィールド

キャラクター&開発コンセプト

ゴルフ/パサートベースの本格コンパクトSUV

今回導入されたティグアン 「トラック&フィールド」 (photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
2007年9月のフランクフルトショーでデビュー、2008年9月30日に日本で発売された「ティグアン」は、ゴルフとパサートをベースに開発された5人乗りのコンパクトSUV。全長4.5メートル未満のコンパクトなボディ、ワゴンのような室内空間や積載性、2リッター直噴ターボ+6速AT+フルタイム4WDによるオンロード/オフロード共に優れた走行性能などを特徴としたファミリーカーでもある。 車名はドイツ語の虎(Tiger)とイグアナ(英語ではIguana、ドイツ語ではLeguan)からなる造語。「躍動的でダイナミックな虎と力強くタフなイグアナのイメージ」というのが理由だ。

欧州では好調なスタート

欧州では2007年末にデビューし、3週間で4万台以上を受注。ドイツでは翌2008年1月から7月まで、7ヶ月連続でSUVセグメントの販売ナンバー1となったという。日本でも発売後わずか1ヶ月で1000台を受注するなど好調なようだ。生産はトゥーランと同じ、ドイツ・ウォルフスブルグの「Auto 5000 Gmbh」で行われる。 ■フォルクスワーゲン グループ ジャパン>プレスリリース>新型「ティグアン」を発売(2008年9月3日)フォルクスワーゲン グループ ジャパン>プレスリリース>「ティグアン」 発売1ヶ月で受注1000台突破(2008年10月28日)http://www.auto5000.de/(ドイツ語)

価格帯&グレード展開

ひとまず360万円のモノグレードでスタート

今回発売されたモデルは、ロード&トラックならぬ、「トラック&フィールド」というグレード1種類のみ。エンジンはVWアウディ車でおなじみの2リッター直噴ターボ(最高出力は170psに抑えてある)。変速機はDSGではなく、6速トルコンATを採用。駆動方式は全車、VW車では「4MOTION」と呼ばれる電子制御フルタイム4WDとなる。バイキセノンヘッドライトとリヤビューカメラは標準装備だ。 なお、2009年中頃には、同じ2リッター直噴ターボを200psに高めて(というか本来の出力に戻して)、17インチホイールやスポーツシートを装着するなど内外装をスポーティに仕立てたティグアン「スポーツ&スタイル」が導入される予定だ。 【 2リッター直噴ターボ(170ps)】 ■ティグアン トラック&フィールド   360万円 ★今週の試乗車 【 2リッター直噴ターボ(200ps)】 ■ティグアン スポーツ&スタイル ※2009年中頃に発売予定

地デジ付HDDナビやETC等のセットは27万3000円

またメーカーオプションとして、新型HDDナビゲーションシステム「RNS 510」、地デジTV、ETC等のセットオプションも27万3000円で用意されている。 ボディカラーは全6色で、初期受注の1番人気はキャンディホワイト (45%) 、次が今回の試乗車と同じディープブラック パール エフェクト (40%) だそうだ。

パッケージング&スタイル

ゴルフというよりトゥーランに近い

ボディサイズは全長4460mm×全幅1810mm×全高1690mm(ナビ付の試乗車の場合、全高は1710mm)。印象としては全長が短く、輸入SUVにしては幅もそこそこ。見た目にゴルフやパサートの面影はないが、コンパクトさはゴルフ譲りと言うか、むしろそれをベースにした7人乗りミニバンのトゥーランに限りなく近い。日本車で言えば、トヨタRAV4、日産デュアリス、ホンダCR-Vとどっこいどっこいのサイズ感だ。
 
(photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
プレス資料によると、ティグアンのボディは「フロントセクションからセンターアッパーボディまでがパサート、リアセクションはゴルフ」だが、ホイールベースがパサート(2710mm)より断然短く、トゥーラン(2675mm)とゴルフ(2575mm)の中間あたりの2605mmであることや、生産拠点がトゥーランと同じであることを考えると、構造的にはトゥーランも縁遠からず、とも思える。

ちょっとだけ脱VW的なインテリア

内装の質感はゴルフというより、その上級車であるパサートレベルだが、デザインはほぼ全面的にティグアン専用となっている。ダッシュボードのメタル調パネルに配された計8個もの空調吹き出し口、スポーツカー風にスロープ状となったドアアームレストなど、フォルクスワーゲンの従来イメージとは異なる意匠があちこちに見られる。メーター類や操作系などの機能パーツは、これまでのVW車通りだ。
 
視点と着座位置がゴルフやパサートより高まっており、ドライビングポジションはかなりアップライトに変化している。シートは生地の模様こそちょっぴりポップだが、座り心地はゴルフと似たようなもの。リクライナーも相変わらずダイアル式で、仮眠をとるときは少々面倒。助手席の方はレバーで倒すことができる。

パサート譲りの電子制御パーキングブレーキを採用

パサートに続いて電子制御パーキングブレーキを採用しているのもティグアンの特徴。これは欧州でデビューしている5代目ゴルフには採用されていないもので、上級車の証と言えようか? 「オートモード」ではアクセルを踏むと自動で解除、パーキングに入れると自動で掛かる。作動時には「ヒュウゥン」とアクチュエーター(たぶん)の音が聞こえてメカメカしい。

オプションのHDDナビも特典多数。リアビューカメラを標準

メーカーセットオプションのHDDナビゲーションシステム「RNS 510」はタッチパネル式だが、オーディオ操作の一部はステアリングスイッチでも可能だ。加えて、最近のアウディ車のように「停まると映る」地デジのTV画面も楽しめる(国産車では未だに地デジチューナーはオプションであることが多い)。さらにこれらとセットで、ETC車載器がセンターコンソールにビルトインで装着されると聞けば、PNDが席巻しつつあるとはいえ、「ええい、メーカーオプションで付けてしまえ」となることが多いだろう。さすが輸入車大手のVW。商売上手だ。価格はiPodやUSB接続デバイスも込みで、27万3000円である。 なお後退時にトヨタ車のようなガイド線が表示されリアビューカメラは標準装備。要するに液晶モニター自体は最初から存在するわけで、その意味でも「RNS 510」をついでに装着してしまうケースが多そうだ。

ミニバンのトゥーラン、SUVのティグアン

リアシートも着座位置が大幅に上がり、姿勢はアップライトだ。空間的にはトゥーランの2列目までに近いと言っていいかもしれない。ただし3列シートミニバンであるトゥーランの後席は、完全に3分割のシートで、形状はやや平板であり、ドア開口部も広い。一方、ティグアンの後席は2人掛け優先で、形状はホールド感のあるもの。また、左右別々に前後スライドができる。このあたりはキャラクターが違う2車で、意図的に変えたものだろう。

100Vコンセントも標準装備

この後席まわりには、ファミリカーらしい便利装備がいろいろ付いている。欧州車が好きなシートバックの折り畳み式テーブル、中央席を倒して使うドリンクホルダー付き大型センターアームレストなどはまあ想定内として、足下センターコンソールに備わるDC12V電源とAC100V電源コンセント(150W)がいかにも便利そうだ。 また天井を見上げれば、まるでアメリカンミニバンのような4連の小物収納スペースがある。位置が前席と後席の間くらいで、どちらからも手が届きにくいのが何だが、このあたり北米市場をけっこう意識しているのかもしれない。 後席乗員のプロテクションとしては、ゴルフ同様にカーテンエアバッグとリヤサイドエアバッグが標準装備される。前席用も合わせて計8エアバッグだ。

座面沈み込みタイプのシングルフォールディングを採用

荷室容量は5人乗車時で470L。リアシートを畳んだ状態で、最大1510Lだ。撮影時にはうっかり忘れてしまったが、助手席の背もたれを前に倒せば、長尺物も積める。床下にはテンパー式のスペアタイヤが収まる。
 
なお、リアシートの折り畳みはダブルフォールディングではなく、背もたれを倒すと同時に座面が沈み込むシングルフォールディング。VW車では珍しい。なおゴルフの場合は、背もたれが倒れるだけの単純なシングルフォールディング、パサートは定番のダブルフォールディング、トゥーランは3分割のタンブルフォールディングと三者三様ならぬ、四車四様となっている。ティグアンはヘッドレストを付けたままでよく、操作は一番簡単だ。

基本性能&ドライブフィール

おなじみ2リッター直噴ターボは170psの低圧バージョン

ティグアンに搭載されるエンジンは、アウディVWでおなじみの2リッター直4・直噴ターボエンジン。ゴルフGTIやアウディTT、A4あたりだと200psを発揮するエンジンだが、今回発売されたグレード「トラック&フィールド」では、170ps/4300-6000rpm、28.6kgm/1700-4200rpmと幅広い回転域で一定の力をキープするように、出力制御されている。もちろん、どちらかと言えば低回転域重視だ。最高速はメーカー発表値(ドイツ仕様、6AT)で197km/h、0-100km/h加速は9.9秒だ。これはゴルフのTSIトレンドライン(122ps)やトゥーランのTSIトレンドライン(140ps)と同等のパフォーマンスだ。

トルコンATならではの良さは健在

変速機はDSGではなく、このクラスの新型VWでは珍しい6速トルコンATを採用。初めてこれを聞いたときは意外だと思ったが、オフロード走行を想定するとDSGよりトルコンATの方が相性がいいようだ。 DSGのダイレクトなレスポンスに慣れてしまった今、6ATはちょっとかったるいかも、と思いながら走り出したが、実際のところそんなことはまったくなく、むしろ変速スピードは心なしかDSG風にスパッスパッと素早くて「DSGじゃなくてもいいじゃん」と思えてくる。もともとVWアウディの6AT(従来と同じならアイシンAW製のはず)はシャキシャキかつ滑らかに変速するトランスミッションだ。 しかも発進時に強めのクリープがあり、坂道発進でコツを要しない点は、トルコンの古き良きメリット。DSGにも電子制御クラッチで疑似クリープはあるが、やっぱり弱めだし、ヒルホルダーにも慣れが要るから、この点では確かにより無難と言える。

車高を上げたゴルフという感じ

リアサスペンションは、パサートの4MOTION用をベースに、スプリング、ダンパー、スタビライザーを専用設計としたもの。オフロード走行に備えて、サブフレームはパサートのアルミ製からスチール製に変更されている。フロントのロアーアームとサブフレームはアルミ製だ。 で、実際に走ってみると、サスペンションはいかにもVWらしく硬め。印象としては、ゴルフの車高をそのまま上げただけ、という感じだ。タイヤは215/65R16とサイズは普通だが、M+S(いわゆるマッド&スノーもしくはオールシーズン)ではなくサマータイヤ(ブリヂストンのDueler H/P Sport )なので、ダラダラとアンダーステアが出ることはなく、キュッ、キュッと小気味よくノーズがインに向く。さらに調子に乗って姿勢変化を誘うと、ツツッとリアが流れて一気に向きが変わるところは、今のゴルフそのものだ。このクラスのSUVとしては、最もスポーティなハンドリングと思われる。

【悪路走破性 その1】第4世代ハルデックスで、43度の登坂も可

tiguan-17off-02-200.jpg (photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
ティグアンが売りとする悪路走破性にも少し触れておく。カタログでは「最大43度の急斜面を駆け上がる」と豪語しているが、このクラスのSUVでこんな崖のような急勾配の登坂性能を可能としているのは、そのフルタイム4WDシステムに使われるハルデックスの電子制御多板クラッチが最新の第4世代に進化したことが最大の要因だ。 従来のハルデックス電子制御4WDは、前後輪の回転差で作動する機械式ポンプでクラッチ制御用の油圧を発生させていた関係上、回転差が生じてから受動的に後輪への駆動力配分を行う(クラッチを圧着する)傾向が強かったという。同じフルタイム4WDでも、いわゆるトルク感応式センターデフのそれに比べて、勾配のある極悪路でスタックしやすいと評されたのはこれが一因だろう。 今回の新型ハルデックスカップリングは、電動ポンプで油圧を発生させる電子制御油圧式となって格段にレスポンスが良くなり、しかも駆動力の伝達配分を回転差に関係なく能動的に行えるようになったという。例えば発進直後に前後の駆動力配分の0:100とするなど、先読みして駆動力配分を行うことが可能になったようだ。

【悪路走破性 その2】「OFF ROAD」モード、十分な対地クリアランス

(photo:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)
ボタン一つで各種機能がオフロード走行用モードに切り替わる「OFF ROAD」モードも標準装備されている。その内容は、アクセルペダル踏み始めレスポンスのマイルド化、ABS制御の変更、電子制御のデフロック機能(EDS)の介入タイミングの早期化など。今やSUVに必須のヒルディセントコントロールは、このモードの作動中、特定の条件(速度20km/h以下、20%以上の下り勾配、アクセルおよびブレーキペダル操作なし)で、自動的に働く。 また、ティグアン独特のスタイリングは、ちゃんと対地クリアランス(走破アングル)の確保にも役立っている。アプローチアングルは28度、ランプブレークオーバーアングルは20度、ディパーチャーアングルは25度、最低地上高は170mm。FFベースのSUVとしては、かなりアゴが地面に接触しにくい形状となっている。

試乗燃費は7km/L台。10・15モードは9.7km/L

あくまで参考ではあるが、試乗燃費は高速・一般道が混ざったいつもの区間(約90km)で7.3km/L。さらに撮影等の移動を除いたトータル約190kmの試乗で、7.8km/Lとなった。低回転のトルクを丁寧に引き出して走れば8km/L台キープも可能だが、一般的な乗り方ではやはり7km/L台が目安と思われた。10・15モード燃費は9.7km/L。もちろんハイオク指定となる。

ここがイイ

適度なサイズ、高い走破性、充実した装備

ちょっとプレミアム感のあるクルマとしては適度なサイズ。これ以上大きいと、プレミアム度は増すが、使いづらい。逆に小さいと、SUVの場合はプレミアム度が落ちてしまう。また内容に比しての価格は、かなりお値打ち感がある。ちょっと背伸びをすれば手が届くという意味で、どうせ買うなら、という気分になれる(させられてしまう)。価格が安いということは値落ち幅も高額車より少ないということだし、サイズが手頃で価格も手ごろとなれば、確かに売れるクルマの第一条件を満たしている。 その上で、単なる生活四駆的なものではなく、オフロード走破性をしっかり確保したと思われる電子制御フルタイム4WDシステム。オフロード試乗はしていないが、主張するとおりの能力があれば、本格的なオフロードコースに挑戦でもしない限り、不満は出ないだろう。釣りで河原に降りたり、林道を軽く走ったりする分には十二分だ。ゴルフなどと共通する「しっかりしたクルマ」感、ドイツ車らしい「かっちりとした室内」の質感といったあたり、お買い得感が高い。 装備もいい。電子制御パーキングブレーキ、バイキセノンヘッドライト、車速と舵角連動のコーナリングライト、リヤビューカメラを完備し、さらにメーカーオプションとしてインテリアに溶け込んだ地デジ付のHDDナビやETCを用意している。リアのテーブルやら100Vコンセントやら、オーディオのUSB端子やらという、日本車にもぜひ欲しいユーティリティもきっちり用意されている。左フェンダーに例の補助ミラーがないということは、助手席側の見切りもいいということか。

ここがダメ

リアビューカメラのモニター画面が小さくて見にくいこと。液晶モニターの右側が、モード設定用のメニュー(ガイド線を並列駐車か縦列駐車か選べる)用タッチスイッチに使われているせいだが、正直言ってこのガイド線、トヨタのものも含めて必須というほどではない。だから少なくともこの場合は、液晶モニター一杯を使ってリアビューを映すべきだと思う。またオプションの新型ナビは操作自体にやや慣れを要した。 オンロードの楽しさは、例えばゴルフなどより劣る。もちろんオフロード性能や室内空間とのトレードオフではあるが。そのための追加モデルが来年にも投入されるので、オンロードでの走り重視の人はそれの発売を待つべきだろう。

総合評価

VWのイメージはSUVによく似合う

最近のフォルクスワーゲン車(というよりポルシェグループ車)の出来が妙にいいことは、ここしばらくの試乗記で書いてきたが、またまたイイものが出てきてしまった。このティグアンも「よくできました」と言うしかない。実用車として使いやすいサイズで、オフロードが本格的に走れて、オンロードでもそこそこ楽しい、となれば、マルチユースという意味でゴルフをも超える存在と言える。 また価格が比較的安いのも素晴らしいところ。ドイツで売れているのは当然として、日本で9月末の発売以来一ヶ月で1000台を受注したというのは、自動車販売の大不況下においては素晴らしい成績だ。 日産エクストレイルのところでも書いた通り、この手のコンパクトSUVは「アクティブ系オヤジの足」だ。しかしいわゆる高級SUVはアクティブに使うには上品すぎる。といってCR-Vなど国産コンパクトSUVでは、プレミアム感が不足する、という意味で、ディグアンはまさに当たり役。日本でのVWブランドの立ち位置は、イヤミに高級すぎず、しかしプレミアム感は維持しつつ、というあたりだと思うからだ。質実剛健なフォルクスワーゲンのイメージはSUVにはよく似合うし、効果的に流されたTVコマーシャルも認知度を高めた。「フォルクスワーゲン・ダス・アオト」というCMのラストに流れるドイツ語は、日本人の親ドイツDNAに響き渡ったのでは。英語より断然かっこよく聞こえた。 もちろんSUVにはオヤジばかりでなく、20代、30代の男性や女性からも人気を得られるはず。となると、かなり広いユーザー層を獲得できる。また360万円という価格はゴルフ・ヴァリアント 2.0TSI スポーツライン(340万円)と20万円しか違わない。オンロードの走りでは絶対的にヴァリアントをおすすめするが、マルチな性能、そして新しさという意味ではティグアンだ。

ライバル車は身内にしかない?

他の輸入SUVとの比較でも、BMWのX3は570万円もするし、ジープ・パトリオットは296万円と安いが、キャラクターがかなり異なる。国産プレミアムSUVならトヨタのハリアーやヴァンガード、日産ムラーノあたりが価格的には近いが、サイズがちょっと大きい。こうなるとモデル末期となるゴルフに代わって、フォルクスワーゲンの中では今後しばらく最量販モデルとなっていってもおかしくないくらいだろう。サイズ的に近い他の国産SUVは、ティグアン並みのオフ性能を持たないことが多いから(エスクードなどは例外だが)、実にいいところを突いたクルマ、といえそうだ。 ただ「オフロード性能などまったく必要ない」という人は、モデル末期で完成度が頂点に達したゴルフやゴルフ・ヴァリアントの方が幸福感は高いはず。必要もないのに10・15モード燃費ですら9.7km/Lのクルマに乗ることはない。10・15モードで15.4km/L、実燃費で10km/L以上走るゴルフTSIトレンドラインのような、もっと日常的に楽しいクルマがあるのだから。

作者: DAYS http://www.motordays.com/

更新日:2008年11月14日 13時41分

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日産 ムラーノ 350XV Four

キャラクター&開発コンセプト

北米主体から、グローバルモデルへ

2008年9月29日に発売された新型ムラーノは、日産の高級クロスオーバーSUV。北米では2002年に、日本では2004年に発売された初代に続く2代目だ。 初代ムラーノはそもそも米国市場をターゲットにしたもので、累計販売台数の50万台のうち42万台は米国での実績。一方、新型は最初からグローバルモデルとして開発。販売エリアも日・米・欧をはじめ「最終的に」約80ヶ国となった初代に対して、2代目は最初から170ヶ国で計画。北米ではすでに1月から発売されているが、今後は他地域へも展開される予定だ。

ティアナと同じDプラットフォームを採用

写真は新型のテーマカラーでもある新色「グレイッシュブロンズ」
シャシーは新型ティアナ等と同じ新世代の「D-プラットフォーム」をベースとしたもの。エンジンは改良型の3.5リッターV6と2.5リッター直4だ。直4の方は従来の4ATに代えてCVTとなり、燃費性能の向上を図っている。V6は初代からCVTだった。 生産は海外向けも合わせて、初代同様に日産の九州工場で行われる。国内の販売目標台数は月間900台。初代は月間1000台が目標だった。 ■日産自動車>プレスリリース>新型「ムラーノ」を発売(2008年9月29日)

価格帯&グレード展開

全車4WDで2.5Lが315万円~、3.5Lが362万2500円~

V6と直4それぞれに「XV」と「XL」の2グレードが設定され、計4グレード。排気量が違っても、同じグレード名なら装備や仕様はほとんど同じだ。 「XV」と「XL」の装備差は、電動レザーシート、スタイリッシュガラスルーフ、ルーフレール等の有無で、価格差は42万円。サイドブラインドモニターとバックビューモニターは全車標準だが、カーウイングスナビは全車オプションとなる。 【VQ35DE(260ps、34.3kgm)+エクストロニックCVT-M6】 ■350XV FOUR    404万2500円 ★今週の試乗車 ■350XL FOUR    362万2500円 【QR25DE(170ps、25.0kgm)+エクストロニックCVT】 ■250XV FOUR    357万円 ■250XL FOUR    315万円

パッケージング&スタイル

ちょっと甲虫風? アメリカンからコスモポリタンに

デザインテーマは先代と同じ「SHIFT_design」(デザインをシフトする)だが、印象は新旧でけっこう違う。ヘッドライトとグリルは一体型となり、リアコンビランプはハッチゲート両脇に伸びる奇抜な縦長タイプから、デュアリスに似た横長タイプ(LED式)に変更。前後フェンダーは初代のホイールを強調したものから、パネル全体で膨らんだ上品なものとなった。
 
初代ムラーノ(2004~2008年)
全体としては、ちょっと甲虫っぽい?感もあるが、初代のアメリカンに対して、新型はヨーロピアンとかコスモポリタン(全世界的な)という印象だ。 一方で、こうした表面的な意匠を抜きにして眺めると、初代と2代目のシルエットは実はそっくりで、特徴的なサイドウインドウのグラフィックスもほぼ踏襲。つまり「変わった」のは、あくまで表面のデザイン処理が主とも言える。

ボディサイズは大差なし

ボディカラーは全7色で、小キズなら自然に復元するというスクラッチシールド塗装。試乗車のボディカラーは「ボルドーレッド」
ボディサイズ(先代比、いずれもルーフレール付)は、全長4825(+55)mm×全幅1895(+15)mm×全高1730(+25)mm。全体に少しずつ大きくなったが、主な要因は歩行者衝突安全性やデザインなどで、根本的なパッケージは変わっていない。ホイールベースも先代と同じ2825mmだ。

デザインに品質が追い付いた。装備も充実

先代のインパネデザインは当時の日産らしく、いかにも「デザインをシフト」したものだったが、コンセプトカー風の生煮え感もちょっとあって、高級感や質感にはちょっと乏しかった。 新型ムラーノでは、そのあたりをしっかり修正。小技の効いたデザインに質感が完全に追いついている。センターコンソールやドアトリムのシルバー部分も、本物のアルミ製を採用。このクラスの国産車でここまで素材にこだわる例は少ない。価格以上の高級感と言っていいだろう。 カーウイングを始め、各種スイッチ類の質感もすっかり洗練された。先代はシフトレバーが幅広いセンターコンソールの左側にあるなど、左ハンドル仕様のままだったが、新型はちゃんと右側に配置し直している。数字が小さくて読みにくいのは残念だが、平均燃費などの情報表示も充実している。最近の日産車でいいのは、情報モニターのモード切替が、ステアリングホイールの外から出来る点だ。 窓からの視界は良好で、左サイドや後方のモニターも全車標準装備。これはもちろん例のフェンダーミラー装着を回避する意味もある。ステアリングはチルト(角度調整)およびテレスコピック(伸縮)がそれぞれ独立したレバーで調整可能。これはオプションで電動にもできる。いずれにしてもドライビングポジションは思いのままに調整可能だ。

「XL」グレードのスエード調が気持ちいい

米国ではミドルクラスと言われてしまうムラーノだが、全幅約1.9メートル、全高1.7メートル超、ホイールベース2.8メートル超という外寸ゆえ、後席が狭いはずはない。乗り降りも楽だし、足下のフロアも真っ平ら。高級セダンの後席に乗り慣れた人でも、超高速走行時を除けば「こっちがいい」と思うはずだ。 また、今や日産のお家芸(ルノー伝来?)とも言うべきシートの座り心地は絶妙。試乗したレザー仕様ももちろん悪くないが、特に「XL」グレードのファブリック(スエード調トリコット)なら、そのフカフカ感がより堪能できる。これでオットマンがあれば高級ミニバンの後席も怖くない?
 
天井には「外から見るとガラスルーフだが、実はダブルサンルーフ」というティアナと同じ「スタイリッシュガラスルーフ」が「XV」グレードに装備される。絶対的なガラス面積では一枚モノのガラスルーフに劣るが、天窓のようなデザインや前側が電動で開くところがこれのメリットだ。 エアバッグは前席フロント×2、前席サイド×2、そして前・後席のカーテンエアバッグ×2の計6個。当然ながら後席には自立式アンカー付きの3点式シートベルトが3人分備わる。

後席背もたれの「電動復帰」をオプションで用意

ラゲッジルームでは、バネ仕掛けでワンタッチで床から立ち上がる「ラゲッジ分割機構」が面白い。ボルボ車でも以前から見られるような、荷物の転がり防止用ボードだが、ムラーノのものは左右への転がりを防ぐネットが付いている。 通常時の荷室容量は402L。フロア地上高は高めだが、やはり通常の買い物程度ならこれくらいの高さが使いやすいかも。樹脂製バックドアの操作感は軽く、開け閉めがイヤにならない。床下にはテンパースペアタイヤがある。
 
もう一つ面白いのが、後席の背もたれを荷室側からレバー操作で倒した後、今度は逆にスイッチ一つで戻せる「電動復帰」機能が用意されたことだ(電動バックドアと合わせたセットオプション)。これはバネ仕掛けでは無理で、電動となっている。サードシートの電動化はすでに珍しくないが、セカンドシートのそれは珍しい(国内では初か)。ただし背もたれのリクライニングは手動のままだ。

基本性能&ドライブフィール

パワートレインは熟成進化型(350の場合)

試乗車は最上級グレードの「350XV Four」。おなじみVQ35DE(260ps、34.3kgm)と改良型エクストロニックCVTを搭載する仕様で、車重は1850kgだ。 ちょうど4年前にモーターデイズで試乗した先代ムラーノも、実は同じ「350XV Four」。VQ35DE(231ps、34.0kgm)とCVTという組み合わせも同じで、車重もスタイリッシュガラスルーフ無しで比較すると20kgしか増えていない。 と、そんなことは知らずに乗っても、走らせた印象はけっこう先代に近い。アダプティブシフトコントロール(ASC)などの採用により、エンジンとCVTの協調性を改善したとのことだが、出足が穏やかなところ、アメリカンSUV風にゆったりとしたボディの動きなどは、先代の延長線上にある。出足や坂道発進時にCVTのスリップ感が強く出るところも意図的と思われるが、先代をよりスムーズにした、という感じだ。VQ35DE独特の低いエンジン音は伝わってくるが、総じて静粛性は高いと思う。

基本的なハンドリングは従来通り

4年前の初代と同じように、いつものワインディングで走らせれば、大柄なボディをものともせず相変わらずスポーティに走ってしまう。印象としては、同じクロスオーバーSUVであるハリアーやマツダのCX-7に比べて、エンジンは全域でトルクフル、ボディの動きはよりゆったり、という感じか。ガッチリ、キビキビしたVWティグアンなどと比べると、もうまったく180度違う。 エンジン搭載位置の30mmダウンや各部の剛性強化など、プラットフォームの改良点は多く、さらに4輪リバウンドスプリング内蔵サスペンションの採用、電子制御によるマネージメント技術の進化などもあるが、全体としては何となくゼロクラウンとその後継である現行クラウンとの関係のような、熟成進化型という感じではある。 235/65R18サイズのタイヤはオールシーズンなので、操縦安定性は基本的にVDC(ブレーキLSD機能付)の介入を前提としたもの。ただしVDCを切っても最後までアンダーステアで安定しているし、「オールモード 4X4-i」によってパワーの持てあまし感はほとんどない。ものすごくスポーティとかパワフルとかではないが、全体にバランスよくまとまっている。

最大の進化は実用燃費かも

滑らかに立ち上がるトルクにモノを言わせた走りは、このご時世、なかなか贅沢な体験。ついつい平均燃費計の数値が気になってしまうが、100km/h巡航をわずか1500回転ほどでこなすなどCVTが威力を発揮し、平均燃費は意外と落ちてゆかない。 ということで今回もいつものコース(約90km)を試乗した結果、平均燃費計は最終的に6.3km/Lを表示。さらにそのまま一般道を60km、通勤ペースでユルユル走っていたら、返却時には7.0km/Lまで伸びてしまった。踏んでしまえば6km/Lを割りそうである一方、「エコランは効く」という印象だ。 なお指定燃料は相変わらずハイオクだが(VQ35DEはハイオク前提のエンジン)、10・15モード燃費は先代の8.9km/Lから9.3km/Lへと向上。タンク容量は先代と同じ82リッターなので航続距離は長い。 ついでに2.5リッター直4の方にも触れておくと、こちらは最大出力が163ps→170psに向上(トルクは同じ25.0kgm)。使用燃料はレギュラーで、10・15モード燃費はFFしかなかった先代2.5リッター車の10.6km/Lから、全車4WDとなった新型でも11.0km/L~11.4km/Lへ向上。こちらもタンク容量は82リッターだ。常用域での走りに不足がなければ、2.5リッターが本命か。試乗出来なかったのは残念。

ここがイイ

高まった質感、充実した装備、コストパフォーマンス

内外装、共に高まった質感。先代が出た頃の日産は、デザインは良くても、質感には結構厳しいものがあった。しかしさすがに今回は価格相応の高級感に満ちている。SUVの形をした高級車だ。 同様に、4WDを省略して価格を下げるという高級車らしからぬグレード設定がなくなったこともいい。フルタイム4WDとVDCが全車標準というのは、このスタイルなら当然ではないか。また、このクラスなら「あったらいいな」と思える装備がちゃんと揃っていることもいい。電動のテールゲートと8秒で起きる電動シートバックはオプションだが、このクラスには今後標準装備されるべきものだろう。ラゲッジの分割機構も便利だ。サイドカメラ、リアカメラ標準で、フェンダーの補助ミラーがないことは当然ながら結構なこと。 全車フルタイム4WDで操縦安定性を確保しつつ、それをあまり意識させない軽快な走り。ハンドリングはグラッとこない、安心感のあるものだ。つまりはもっと大排気量で高価なクルマに乗っているような贅沢感がある。もっと高価な輸入SUVと比べると、やはり九州産ゆえコストパフォーマンスが高い。このクラスとしては燃費も良好だ。

ここがダメ

個性的なデザインは他のクルマの中に埋没しないのは確かだが、ちょっと好みが分かれるものになった。日本人でこの手のクルマを欲しがる人は、もっとアメリカンなものを求めるのではないか。 時代にそぐわない、のでなく、時代がこのクルマをそぐわないものにしてしまった。そこがちょっと不運。 せっかくのラゲッジ分割機構には、コンビニフックがあるとさらに便利だろう。

総合評価

この乗り味はフランス車と旧き良きアメリカ車に通じる

シートが柔らかくて、足もよくしなって乗り心地がよい。さすがフランス車(じゃなくて、ルノーぽい味になってきた日産車)。とにかく安楽で、やっぱり「でかいクルマは快適でいいな」と思う。しかしこの乗り心地って、ふと思えばフランス車ばかりでなく、もともとはアメリカ車のものだったのでは。豪華なふんわりシート、柔らかな乗り心地、そして豪快なトルク、フランス車っぽさは、実は旧き良きアメリカ車にも通じるわけだ。最近は欧州車テイストのアメ車が増えているが、この味は確かに北米でウケそう。日本でもフランス車好きのSUV好きにぴったり(そんな人はあまりいそうにないが)。

ウケるテイストが変わってきた

いかにもアメリカンだった先代のデザインは、日本でもアメ車のたくましさを求める層を中心にウケたわけだが(それはエルグランドと同じ構図だ)、さすがに2代目ムラーノはちょっとテイストを変えてきた。というよりメイン市場のアメリカでウケるテイストが変わってきた、ということだろう。でかくて腕っぷしが強いイメージのアメリカ車というより、少し小振りで洗練されたたくましさのあるアメリカ車へと。ビッグスリーが苦しんでいることからわかるように、今のアメリカでうけるのはマッチョなトラック系SUVではなく、コスモポリタンなSUVというわけだ。それゆえこのデザインへのチェンジなのだろう。 そんな変化は、ブッシュからオバマへのチェンジにも似ている。泥臭いマッチョ系大統領から、スマートなさわやか系大統領へのチェンジ。そんなアメリカの政治の変化が日本に今後大きな影響を及ぼすように、クルマのテイストの変化も日本での販売に影響を与えそう。たぶんスマートなオバマは日本の輸出産業に厳しい政策をとるだろうし、スマートな2代目ムラーノも日本市場では厳しい販売状況となるだろう。ブッシュ流の、強気のアメリカ資本主義に追従していればよかった時代にアメ車風のムラーノは売れたのだが、すっかり世の中は変わってしまった。

高級車が一気に冷え込んでいる

日本のクルマ業界不振の深刻さは、アメリカの政策失敗による景気減退の影響が言うまでもなく大きい。ほんの半年前まで日本国内でも売れまくっていた高級車が一気に冷え込んでいる。安いコンパクトカーが売れ、高額なクルマは売れないと一般には思われていたが、実は500万円を超えるような高級車は結構売れていたのだ。300万円超え程度の大衆向け高級車は厳しかったが、500万円超えのクルマは逆に富裕層にかなり売れていた。例えばポルシェのカイエンは700万円からのクルマだが、最近まで実に好調だった。こうしたクルマまでは手が出ない人が、その高級テイストを求めて国産ゆえに比較的安い先代ムラーノを買っていた、ともいえるのでは。その意味で2代目は悪いタイミングになってしまった、としか言いようがない。 日産は北米で金利0%ローンを始めたようだが、そろそろ日本でもその必要が出てきている。クルマは日本でも生活の必需品だが、必ずしもすぐに買い換えが必要なものではない。ほとんどのクルマは、乗ろうと思えばまだ数年は乗れるものばかりで、今は皆が時世を見ながらそうやって乗り換えをしなくなっていることが、売れない原因といえる。それを打開して乗り換えを推進するには、かつて国産車では行われたことのない金利0%ローンをメーカーが率先してやるべきだろう。さらにこれにかなり一般化してきた残価設定ローンを組み合わせることで、クルマの買い方は限りなくリースに近づく。400万円のムラーノを3年後残価40%で金利0%ローンとする。100万円の下取り車があるとすると、毎月の支払いは4万円弱。この高級車がそれくらいのローンで買えるなら、と思う人を増やす以外に、この販売不振を改善する方法はないのではないか。 むろんこうした支払い額を少なくみせるローンの一種が、サブプライムローンでもあったわけで、残価設定ローンは残価を保証しているという点で、サブプライムローンにも似ている。もしメーカーやディーラーが倒産でもすれば、それで終わりだし、最悪、残価が第三者に売られてしまったりしたら、これはもうサブプライムローンそのものとも。アメリカでメーカー系ファイナンスがやばくなっているように、けしてほめられた方法でないことは分かっているが、新聞で日産の九州工場が2008年11月から来年3月までの間に、ムラーノなど約3万7000台を減産すると報道されている現在、せめて国内販売だけでも本当になんとかしないと。放っておいてもどうにもならないのなら、あがいてみるしかない。先にさらなる地獄が待っているとしても。

作者: DAYS http://www.motordays.com/

更新日:2008年11月9日 8時33分

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スズキ ワゴンR FXリミテッド/ワゴンR スティングレー TS

キャラクター&開発コンセプト

プラットフォームを一新、CVTを拡大採用

2008年9月25日、「ワゴンR」がフルモデルチェンジして4代目となった。トールワゴンとしての究極はパレット(2008年1月発売)に任せて、今回はより「ワゴンRらしさ」を追求。「快適 スタイリッシュ」を開発コンセプトに、内外装デザインやパッケージングを一新。プラットフォームはボディ前半が新設計で、後半はパレットからの発展版となった。パワートレインに関してはCVTの大々的採用がニュースだ。 販売目標は今回で2代目となった「ワゴンR スティングレー」と合わせて1万8000台。年間に直すと21万6000台となる。

15年間で300万台。間違いなく現代の「国民車」

初代ワゴンR(1993年) (photo:スズキ)
初代ワゴンRは1993年に登場。当初はアルトをベースに背だけ高くした異形のモデルと見られたが、これがスズキ自身も驚く大ヒットとなり、1995年には早くも軽販売台数ナンバー1を獲得。軽ワゴンブームの先駆けとなった。
 
2代目ワゴンR(1998年) (photo:スズキ)
2代目は軽規格改訂と同時に1998年に登場。2000年3月には月間3万台を初めて記録するなど、初代を超えるヒット作に成長。 2003年に発売された3代目は、軽ブームの到来もあって販売台数を初代や2代目以上に伸ばし、さらにダイハツの大攻勢を退けて5年連続(2003~2007年)で車名別の軽販売ナンバー1となった。
 
3代目ワゴンR(2003年) (photo:スズキ)
この15年間での累計販売台数は、300万台を達成。ワゴンRは名実ともに日本で最も売れている「国民車」となっている。 ■スズキ>プレスリリース>新型「ワゴンR」、「ワゴンRスティングレー」を発売(2008年9月25日)

価格帯&グレード展開

主力は110万円前後から140万円台。「4ATかCVTか」が分かれ目

価格帯はおおよそ90万円から160万円弱だが、販売主力はワゴンRなら110万円前後の「FX」や「FXリミテッド」、スティングレーなら120万円台の「X」や140万円台の「T」(ターボ車)あたりだろう。4WDは「FA」のみ14万3850円高で、それ以外は11万7600円高となる。 変速機は下位グレードが4AT、上位グレードがCVT(ターボ車は全てCVT)で、中間の「FXリミテッド」には4ATとCVT(5万7750円高)の両方がある。ただしCVTを選ぶと、4ATでは2万6250円のオプションであるABSがオマケで?付いてくるため、実際の価格差は3万円程度。「FXリミテッド」を買うならCVTがお勧めだ。 【ワゴンR】 ■FA       90万8250円(5MT/4AT) ■FX       104万4750円(5MT/4AT) ■FXリミテッド  112万3500円(4AT)/118万1250円(CVT) ★今週の試乗車 ■FTリミテッド   134万9250円(CVT) ※ターボ車 【ワゴンR スティングレー】 ■X        125万4750円(4AT)/128万6250円(CVT) ■T        141万7500円(CVT) ※ターボ車 ■TS      155万4000円(CVT) ※ターボ車 ★今週の試乗車

パッケージング&スタイル

プラットフォームは新設+パレット譲り

新型ワゴンRのボディサイズ(先代比)は、全長3395(同)mm×全幅1475(同)mm×全高1660(+15)mm、ホイールベース:2400(+40)mm 。プラットフォームはキャビン部分をパレットと共有するが、エンジン周辺は新設で、ワゴンRとしては実質的にオールニューである。全体に低く構えた印象だが、リアのハッチゲートには従来通りの高さがあり、結果的に背は先代より高くなっている。

大胆にウエッジシェイプへ

外観の印象としては「パレットの背が低い版」という感じだが、それも当然。デザインチームもパレットとほぼ同じようだ。しかしパレットとは逆に、ボンネット、フロントウインドウ、ルーフはかなり前下がりで、同時にベルトライン(サイドウィンドウの下端)も大胆に後ろへ行くほど上がるなど、全体にウエッジシェイプ。サイドウインドウもかなり小さい。とにかく全体にスポーティな雰囲気が漂う。 後席の基準位置が後方に移動したことで、リアドアも大きくなった。そのためワゴンR伝統の6ライトウィンドウ(サイドウィンドウが片側3枚ずつ)ではなくなったのも新しい動きだ。

大径タイヤで力強く

タイヤは一気に大径になり、特にスティングレーの最上級グレードでは165/55R15という一昔前の軽では考えられないほどの大径サイズを履く。直径で3センチも大きなタイヤはルックスだけでなく、燃費(転がり抵抗の軽減)にも効くそうだ。マッチ箱のようなボディの4隅に、小さなタイヤを履かせた初代ワゴンRからすると隔世の感がある。 新型ワゴンRのボディカラーは全9色で、試乗車は「日本の空をイメージした」という新色のブリーズブルーメタリック。スティングレーの方は全8色だ。

質感、操作性、居住性・・・・・・全てが進化

先代の面影はあるものの、インパネの質感はダイハツ同様、たった5年にしてここまで上がるか、というくらい劇的に上がっている。新採用のインパネシフト、自発光式のメーター、収納スペース、昔の軽の倍くらいありそうな?大柄なベンチシートなどはもう言うことなし。例の助手席シート下のボックスも継承している。 天地の狭いフロント&サイドウインドウからの視界は、まるでアメリカンSUVやトヨタbB風。要するに「部屋」のような広々感はパレットに任せて、ワゴンRではもう少し「クルマ」らしい空間を目指したということか。
 
こちらはスティングレーのインパネ
車両価格の高いスティングレーは、ある程度コストの制約をまぬがれた装備設定となっている。ブラックを基調とした内装に、ブルーの自発光3連メーター。シートも形状こそ同じだが、成形タイプのワゴンRに対して、質感や触感のいい縫製タイプとなっている。 とはいえ、スティングレーはともかく、ワゴンRには装備面でどうしても気になる点があった。これは後で触れたい。

タンデムディスタンスは驚異の+140mm

後席に関しては、とにかく足下の広さが圧巻だ。ホイールベースは+40mmだが、リアシート位置を後方に移動したことで、室内長は105mmも伸びて1975mmに、タンデムディスタンス(前後乗員の距離)は何と140mmも伸びて985mmになっている。これが出来たのは、パレット譲りのスペアタイヤレス(パンク修理キット搭載)&燃料タンク後方移動のおかげだ。床も完全にフラットになっている。 リアシートはリクライニングのほか、左右別々に160mm(先代比+25mm)の前後スライドも可能。座面は従来通り、背もたれを畳むと連動して沈むタイプだが、クッションの薄さ感はなく、サイズも拡大されたことで座り心地はさらに良くなった。これで背もたれのクッションを厚くすれば、いよいよ普通車のコンパクトカーを超えてしまいそう。サイドウインドウは当然100%全開する。 安全装備に関しては、後席シートベルトのアンカーが今回から自立式になった。サイド&カーテンエアバッグはスティングレーの最上級グレード「TS」のみの装備となっている。 その他、ステップもより低く、広くなってさらに乗り降りしやくなっている。地道ではあるが、こういった細部の改良こそ、ファミリー層の心に響くところだろう。

パレット譲りのスペアタイヤレス。積載性に不足なし

室内長を大幅に伸ばした結果、荷室長はその分短くなったわけだが、どのみち後席がスライドするので、実質的な弊害はない。リアシートをワンタッチで畳み、さらに助手席の背もたれを前倒しにすると、大人が足を伸ばして寝られる荷室長(室内長とほぼ同じ1.9メートルほど)が得られる。
 
先に書いたようにパレット同様、新型ワゴンRもスペアタイヤを省き、床下にはパンク修理キット(と念のためかパンタグラフジャッキ)を備える。 なお、スティングレーは全車、タイヤ空気圧警報システムを標準装備する。エアボリュームの少ない偏平タイヤに配慮したのかもしれないが、とにかくスティングレーの装備は全体にいい。

基本性能&ドライブフィール

【ワゴンR】 ベルトノイズなし。間違いなくお勧めできるCVT

試乗した車両は、ワゴンRの訴求グレード「FXリミテッド」(ノンターボ、CVT、車両本体価格118万1250円)とスティングレーの最上級グレード「TS」(ターボ、CVT、同155万4000円)の2台。スズキ本社を起点とした浜松周辺で試乗した。 まずは新型の実力を計るべく「FXリミテッド」でスタート。おなじみ3気筒の「K6A」型(54ps、6.4kgm)エンジンに目新しいところは特にないが(もちろん細々と改良は入っている)、変速機はJATCO製のCVTだ。今までスズキの軽でCVTと言えば、新型セルボの直噴ターボモデル「SR」など一部に限られていたが、スズキもついに大々的に・・・・・・ということになる。 ということで、ついつい比べてしまうのが今まで試乗チャンスが多かったダイハツのCVT車だが、まず「あれっ」と思ったのは、スズキのCVTが静かだということ。要するにCVTのベルトノイズがほとんどしない。セルボSRの時はエンジンが直噴ターボという特殊なケース(非常に高コスト)だったが、今回のようなNAエンジンとの組み合わせでもそれは明らか。遮音対策はかなり頑張ったということだが、軽のCVT車としては最も静かと思われ、もはや最新1.3リッタークラスのCVT車にも匹敵するレベル。加えて、自然な出足(もちろん発進用のトルコン付き)、スリップ感のない中間加速、そしてエンジン回転を抑えた静かな巡航まで、このCVTに死角はない。

【ワゴンR】 ついに完成した操縦安定性。重厚感すらある乗り心地

形式名こそ前がストラット、後ろがI.T.L(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)と同じだが、サスペンションは前後とも新開発。新しいプラットフォームと合わせて、ついに4代目にして、うるさ型からも文句のでない操縦安定性を得た、という感じだ。先代までのワゴンRは、コーナリング中のアクセルオフやブレーキング、といった厳しい場面で、リアの安定感に物足りない感じがあったが、もはや新型にそんなネガはない。控えめに言って、ダイハツ車もウカウカできないレベルだ。重厚感すら出てきた乗り心地は、スイフトの1.2あたりと張りそう。 100km/h巡航時の回転数はタコメーターがないので不明だが、少なくともエンジン音はほとんど聞こえない。風の強い日だったにも関わらず、直進安定性にもまったく不安を覚えなかったが、このボディスタイルと軽量ボディを考えると、これはすごいこと。このノンターボでも最高速は130km/hまで確認したが、そこまで達するのに時間が掛かるため、現実的には120km/hといったところ。

【ワゴンR スティングレー】 ターボ+CVTの低回転トルクに驚く

お次はスティングレーの最上級ターボモデル「TS」。こちらは新開発のターボチャージャーで過給されて、64psと9.7kgmを発揮する。セルボや先代ワゴンRの直噴ターボ「DI」(64ps、10.5kgm)は「あまりに高コスト」ということで今回は見送ることになり、これは従来の低圧ターボをベースに過給圧をアップしたものだ。冷却性能を上げて、従来の低圧ターボ並みの圧縮比(8.9)を維持したのがポイント。変速機は7速パドルシフト付きCVT(スティングレーのターボ車に標準装備)となる。 エンジンを掛けた瞬間、さすがに先ほどのワゴンRに比べて静かで(スティングレー全車で遮音・吸音材が追加されているようだ)、電動パワステの手応えもずっしり。さらに2500回転くらいからリニアに立ち上がるトルクは、感動的ですらある。ターボラグはもちろんまったくない。圧縮比をキープしたのが効いているようだ。 もっとも、そこから先のパワーは割と抑え気味で、全開加速は穏やか。直噴ターボに比べれば、やはり絶対的なトルクは抑えられているほか、CVT全車に電子制御スロットルが採用されているので、おそらくこのあたりの出力特性は実際のスロットル開度やCVTの変速プログラムでセーブされているのでは。なお、このスティングレーの最上級グレードにのみ、ESPがオプション(6万3000円)で用意されている。

【ワゴンR スティングレー】 3000回転未満で100km/h巡航

高速での100km/h巡航はメーター読みで2600~2700回転ほど。CVTなので走行抵抗や負荷によって回転数は敏感に変動してしまうが、変速比自体が超ワイドなのは確かだ。いずれにしても、軽自動車でもって3000回転未満で追い越し車線が走れることを驚異的と言わずして何と言おう。 そこからアクセルを踏み込めば、スルスルと車速を上げてゆき、速やかに140km/hに達する。その領域でも静粛性(風きり音も低い)、快適性、直進安定性には何の問題もない。特に静粛性に関しては、吸音素材の天井、液封エンジンマウントの採用、ウェザーストリップの2重シール化といった対策で念入りに高められているらしいが、それも納得だ。 タイヤは165/55R15という細くて薄いもので、乗り心地も少々固めだが、気になるほどではない。大きめの段差を強行突破する時に、バコッと煽られて意識するくらいだった。

試乗燃費はノンターボが16.6km/L、ターボが11.9km/L

今回は2台とも、ほぼ同じ一般道と高速道路の混じったコースで約100kmずつ試乗。参考までに試乗中の燃費は、撮影のための移動を除いた約60kmの区間で、車載平均燃費計(全車標準装備)で計測。結果はノンターボエンジン+CVTのワゴンR「FXリミテッド」が16.6km/L、ターボ+CVTのスティングレー「TS」が11.9km/Lだった。いつも名古屋近郊で走るコースとは異なるので、若干いい数字になったという感覚はあるが、同じ条件でもスティングレーが11km/Lを切るようなことはないだろう。 なお、10・15モード燃費(FF車)は、ノンターボ+CVT車が軽トップクラスの23.0km/L(JC08モード燃費は22.2km/L)、ターボ車(CVTのみ)は21.5km/L(JC08モード燃費は記載なし)だ。

ここがイイ

スタイリングにも効いた新型シャシー

シャシーの変更で、室内が広くなっただけでなくデザインの自由度が上がり、スタイリッシュになったこと。先代のエクステリアは室内を広げるためのデザインにも見えたが、新型のそれはとてもまとまっている。パレットから始まった「スペアタイヤレス」が、すべてに効いている。スティングレーのデザインも先代は後付け的だったが、今回は最初から作られているのがよくわかる。 先代の良さを引き継ぎつつ、さらに広くなった室内や荷室が素晴らしい。後席はシートの座面長が25mm伸ばされ、背もたれは30mm高くなっているし、当たり前だがヘッドレストもちゃんとある。背もたれは倒したときにカチッとロックし、床板という感じになるので荷物を置くときに違和感がない。

静かなCVT、トルク感あるターボ

CVTはとても静か。この完成度で数万円高い程度なら、断然4ATよりCVTだろう。ターボエンジンのトルク感もいい。コストが高くて、とても量販軽自動車に使えない、と諦めた直噴ターボの代打として開発されたポート噴射のターボエンジンだが、結果として決勝打に値する性能になったところがスズキらしい。こうなると走りや静粛性に関しては、もう不満など出ることはないだろう。軽として、ではなく、クルマとしてほとんど完璧になった。新型、特にスティングレーは先代までのネガを徹底的に潰した結果、下手なリッタカーをはるかに超えるほどのクルマになっている。

全車標準の燃費計

瞬間/平均燃費計を全車に標準装備したこと。細かい話だが、まだまだ普通車でも当たり前になっていない装備だ。満タン法などで燃費を計算する習慣がない人も、ぜひこれを使いこなしてエコドライブに励んでいただきたい。その他、スマートキーのほぼ標準化とか、オプションの舵角センサー対応コーナリングランプ、上級グレードのオートライトといった装備が用意されているのもいい。このあたりも、もう何も不満はない。

ここがダメ

ワゴンRでチルトステアリング&シートリフターを省いたこと

ここまですごいクルマゆえ、逆に「なぜ?」と思えたのが、スティングレー全車に標準装備されるステアリングのチルト(上下調節)と運転席のシートリフター(座面高調整)が、なぜか普通のワゴンRにはオプションですら用意されないこと。おまけにワゴンRのコラムカバーはスティングレーと共通パーツらしく、チルト調整用のレバーを設置する穴だけが空いている。おかげでしばらくの間、手探りでレバーを探索することに・・・・・・。特に小柄な女性が利用することの多いクルマゆえ、これはまずい。クルマの基本はまず運転姿勢だったはず。150センチ台の人なら絶対にシートを持ち上げたくなるはずだ。 また大柄なシートはゆったり座れるが、やはり小柄な人だと座面の前側をもう少し下げたくなる。シートリフターがあるスティングレーでも、座面の角度は調整できない。同様にチルトだけでなくテレスコもあるに越したことはない。他の装備をケチってもいいから、ポジション調節は徹底的に自由度を持たせて欲しい。例えば、あるクルマに大柄な人が座ったあと、小柄な人がシート高を好みに調整して座ってみると、ルームミラーは調整しなくていいことが多い。つまり好みのアイポイントは体のサイズにかかわらずかなり一定なものなのだ。その意味で、最低でもシートリフターだけはぜひ欲しい。

総合評価

理想的な4人乗りスモールカー

いや、まいった。素晴らしい、このクルマ。日本で一番売れているクルマの出来がこれか、と驚嘆するしかない。特にスティングレーの方は、もはや完璧と言えるのでは。ただ広ければそれでいいのか、とクルマ好きとしては突っ込みたくなるタントやパレットで開発された手法がこのワゴンRに活かされたとき、ワゴンRは乗用軽自動車として完全なパッケージングとなったわけだ。 そしてターボによる実に適度な、不足のないパワー感。かつて、軽がもう少し広くて、800ccくらいのエンジンが載ったら「理想的なスモールカー」になるのに、と何度も書いてきたが、そうした不満がついに完全に払拭されている。これはもう「理想的な4人乗りスモールカー」だ。 660ccという排気量を感じさせない力強さにもかかわらず、CVTやマネージメントプログラムにより燃費も不満ない。100km/h巡航で3000回転を下回りながらも力強く走る軽など、軽が生まれた昭和の時代に誰が想像できただろうか。動力性能と燃費の両立。小さなボディサイズと広い居住空間の両立。これらが実にバランスよく仕上がっている。しかも静かで快適で・・・・・・、誇張でなく、本当にもう一部リッターカーをしのいだと言っていいだろう。 軽の場合、リッターカーとの自動車税の差は2万2300円ゆえ、10年乗れば20万円以上の恩恵がある。つまりリッターカーであるヴィッツU(134万4000円)とスティングレーTS(155万4000円)は、実質的には同じ価格といってもいい。軽の車両価格が高いという感覚も、この計算で払拭できるのではないか。さらに任意保険なども安くなるから、さらに軽は安く乗れる。性能的にはスティングレーが優れる部分も多いくらいなのだから、ウーン。

ワゴンRの価格、スティングレーの走り

死角はないか。あるとすれば豪華すぎることだろう。素晴らしいインテリアの質感は乗用車としては必要なものではあるが、今後は実用本位の「乗り物」として、豪華さより機能的な部分を引き上げたインテリアを作って欲しいと思う。シンプルで便利で無印商品的な。そして価格をいくらかでも引き下げて欲しい。上記では高くないと書いたが、やはりこのご時世、安ければ安いほどいいのだから。 その意味ではスティングレーではなくワゴンRがいいのだが、そうすると走りも装備もちょっと不満がある。装備をシンプルにして低価格化し、ターボこそデフォルトにすべきだろう。また4ATが残されているが、これももう全車CVTにしてしまうべき。現在はCVTの生産・供給問題がそれを妨げているようだが、環境面から考えても早く全車CVTにしてもらいたいものだ。 つまりスティングレーのような豪華さはいらないから、ごくごくシンプルな、例えばかつてあったダイハツ・ネイキッドみたいな道具感があって、それでいてスティングレー並みの性能という軽が欲しい。もうこれ以上やることはない、というところまで進化してしまったのだから、それこそが性能的に行き着いた軽自動車の、今後は進むべき道ではないか。軽の枠がある以上、これ以上の性能、パッケージングはもう無理だと思う。今後は不要な部分をはぎ取っていく方向への進化を望みたい。

「軽」のマイクロミニこそが究極のエコカーだ

そして、ここまでいいものになった以上、このクルマをベースとして全長3メートル未満のマイクロミニを作り、世界に打って出て欲しいと思う。最近は国際的にも旧スマート並(やスズキ・ツイン並)の2.7メートルまでは求められず、トヨタの「iQ」で話題となった3メートルを切るサイズで許される。軽ゆえ、全幅はどのマイクロミニより狭いのだし。2シーターで左右のシートを前後にずらすというスマートのような手法を採れば、車幅はこのままでも大丈夫だ。あるいは運転席をセンターシートにして後席2座というレイアウトを取れば3人乗りにもできるだろう。全長3メートルを切るために切り詰めるべき全長は、わずか40センチだが、今回伸びた後席足下のスペースは14センチ。十分に広かった先代ワゴンRの後席足下の広さに戻すだけで、すでにこれだけ全長を切り詰められる。となれば、あと26センチは不可能な数字ではないはずだ。画像ソフトでワゴンRの写真をちょっと切り詰めてみたら、これが結構様になっている。このまま出せるのではないか、と思うほど。 かつて売り出されたスズキ・ツインはデザインや性能で今ひとつ難しい部分があったが、スティングレー並みの性能を持つ「軽」のマイクロミニが出たなら、なおかつそれが100万円未満なら、たぶんそれこそが究極のエコカー、マイクロベーシックカー、現代の国民車になるはず。そしてそれは世界にも通用するはず。日本が誇る、この素晴らしい軽自動車をベースにして、世界に誇れるマイクロカーを出して欲しいものだ。

作者: DAYS http://www.motordays.com/

更新日:2008年11月12日 4時5分

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日産 エクストレイル 20GT

キャラクター&開発コンセプト

ポスト新長期規制を初めてクリアした「クリーンディーゼル」

2008年9月18日に発売された(発表は9月4日)「エクストレイル 20GT」は、世界的に最も厳しい排出ガス規制値「ポスト新長期規制」【※】 を、国内で初めてクリアした「クリーンディーゼル」車。2代目(T31型)エクストレイル(2007年8月発売)の高性能トップグレードとして追加された。 ルノーと共同開発されたコモンレール式ディーゼルターボエンジンは、排気量2リッターにして「ガソリン3.5リッターV6エンジン並み」の最大出力173ps、最大トルク36.7kgmのハイパワーと10・15モード燃費15.2km/Lの低燃費を実現。さらに軽油がガソリンより2割ほど安いことから、経済性の高さも大きなメリットなる。 国内での月間目標台数は100台だが、日産によれば発売後20日足らずで、その10倍以上の累計1077台を受注したという。なお新型エクストレイルは海外向けも含めた全量が日産・九州工場で生産される。 【※】ポスト新長期規制 2005年から日本国内で施行されている「新長期規制」より、NOx(窒素酸化物)で47%減、PM(粒子状物質)で64%減となる規制値(車両重量1265kg超の場合)。欧州のEuro6、北米のTier2Bin2、米国カリフォルニア州のSULEVと並び、世界で最も厳しい排ガス規制値の一つ。施行が始まるのは、新型車の場合2009年10月から、継続生産車・輸入車は2010年9月から。 ■日産自動車>プレスリリース>SULEVレベルのクリーンな排出ガスを実現するディーゼル技術を発表 (2008年8月6日)日産自動車>プレスリリース>クリーンディーゼル エクストレイル「20GT」を追加(2008年9月4日)

価格帯&グレード展開

ひとまず6MTのみで、299万9850円

エクストレイルのガソリン車はCVTが主力だが、今回のディーゼル車は6MTのみ。欧州には6ATもあるが、まずは排ガス規制値をすぐにクリアできる6MTからの発売となったようだ。グレード名は「20GT」とあえてディーゼルらしくない名称となっている。 【ガソリン・2WD】 ■「20S」 2L 直4 (137ps、20.4kgm)・CVT 199万5000円 ■「20X」 2L 直4 (   ↑   )・CVT 221万5500円 【ガソリン・4WD】 ■「20S」 2L 直4 (   ↑   )・CVT 215万2500円 ■「20X」 2L 直4 (   ↑   )・CVT 237万3000円 ■「20X」 2L 直4 (   ↑   )・6MT  237万3000円 ■「25S」 2.5L 直4(170ps、23.5kgm)・CVT 231万円 ■「25X」 2.5L 直4(   ↑   )・CVT 253万500円 【ディーゼル・4WD】 ■「20GT」 2L 直4ディーゼルターボ(173ps、36.7kgm)・6MT 299万9850円  ★今週の試乗車

パッケージング&スタイル

フロントまわりは欧州仕様

ボディサイズは全長4630mm×全幅1785mm×全高1685mm。「20GT」は欧州仕様のフロントグリルとバンパーを装備するため、全長がガソリン車より40mm長い。またガソリン車では、赤、黒、青の3色に限られたスクラッチシールド塗装(クリヤー塗装に軟質樹脂を配合し、浅いスリ傷やひっかき傷は自然に復元することを狙ったもの)が、全6色に採用されている。保有年数の長いディーゼルらしい仕様だ。

使い勝手の良さは相変わらず

道具感を重視したインパネデザインは変わらず。使いやすいカーウイングナビ(左サイドとリアのモニターも同時装着)、ティッシュボックスも入るダッシュボード中央の大型物入れ、ダッシュボード両端のドリンクホルダーなど使い勝手が良く、質感にも配慮されている。
 
なお、ステアリング右下には、DPF(ディーゼル・パーティキュレート・フィルター)の煤を焼くための手動スイッチが備わる。通常は自動だが、低速走行ばかりで自然に高温(リッチ燃焼)に出来ない時のためのもので、インジケーターが点灯した時に使う。

防水シートやポップアップステアリングは省略

一方、ガソリン車に全車標準だった防水シート、防水フロア、防水加工天井は、「20GT」に装備されず、シートは専用のクロス仕様になる。またステアリングコラムが90度折れ曲がって跳ね上がるポップアップステアリングもなく、代わりにチルト&テレスコ機能機能付きになった(ガソリン車はチルトのみ)。おそらく販売価格を抑えるための措置と思われるが、エクストレイルならではの装備が省かれてしまったのは残念な部分だ。

防水ラゲッジと容量はそのまま

床と両サイドを樹脂で覆ったウォッシャブル仕様の荷室は、ガソリン車と同じ。上下2段にして、下側に引き出しが付く点も同様だ。 荷室寸法は、5名乗車時の上段のみで奥行き1088mm×横幅1100mm×高さ884mm。仕切りを外せば、最大高さは1012mmになる。この状態で後席のアームレストを倒せば、4人と4つのスノーボードが車内に収まる。
 
さらに後席をダブルフォールディングで畳めば、最大奥行きが1742mmになり、さらに後席の座面クッションを取り外せば1948mm、つまり約2メートルになる。高さ的にはギリギリだが、こうすれば前後ホイールを付けたままのマウンテンバイクを2台積載できるわけだ。このクラスでこれが出来るSUVはそうそうない。

基本性能&ドライブフィール

ガソリン3.5リッター並みのトルクを2000回転で

「20GT」と聞くと、思わず自主規制上限の280psを誇った先代の2リッター直4ターボ車「GT」を連想してしまうが、もちろん今回のモデルは軽油で走るディーゼルの方だ。例えば「20GT-D」みたいに一目でディーゼルと分かるグレード名が良かった気もするが、「あえて」ということだろう。基本的にはこのモデル、英国仕様のディーゼル車(高出力版)そのものと言える。 6MTゆえにクラッチを奧まで踏み込みイグニッションをひねると、グオンとエンジンが掛かり、「カラカラカラ・・・・・・」とディーゼル特有の音と共にアイドリングする。欧州製の最新ディーゼルよりアイドリング音は大きめ、と指摘する声はあるが、振動はほとんどなく、気になるほどではない。 鋳鉄ブロックを持つ形式名「M9R」ユニットは当然コモンレール式で、さらにピエゾ式インジェクターを持つ高性能ユニットだ。173ps/3750rpm、36.7kgm/2000rpmと、馬力はエクストレイルの2.5リッターガソリン(170ps、23.5kgm)と同程度だが、トルクはその1.5倍以上で、ムラーノの3.5リッター(260ps、34.3kgm)すらも上回る。しかも発生回転数はたった2000回転だ。この最大トルク値は排気量2リッターの最新ディーゼルターボとしてはトップクラスで、国内の一般的な3リッター直4ディーゼルターボに匹敵するか、むしろ上回るもの。この9月から新型パジェロに搭載された3.2リッター直4ディーゼルターボ(4M41型)ですら170ps/3800rpm、37.8kgm/2000rpmだから、その高性能ぶりが分かるだろう。 アイドリング付近のトルクは、ほんの少し弱いと感じる刹那があるが、ディーゼルのMT車独特の、最初の一転がしから後は、すぐに「トトトト・・・・・・」と車体が前に進む。なにしろ2000回転で36.7kgmだ。ただし強大なトルクでグイグイというより、軽快、スムーズという表現が近い。

ガソリン低圧ターボみたい。レッドゾーンまでサラッと回る

とはいえ、やはり低回転トルクは相当に強力で、「2WDモード」のままウェット路面でアクセルをワイドに開けると、激しくホイールスピンし、トラクションコントロールが介入する。ドライ路面なら2WDでも不安なく走れるが、通常は「4WDオートモード」に入れっぱなしがいいだろう。どのみち電子制御4WDの場合、燃費はほとんど変わらない。 シリンダーブロックに強度が必要なディーゼルエンジンゆえ、車重はガソリン車に比べて150kgほど重く(ほとんどが前軸荷重)1670kg。それでも3リッターディーゼルSUVに比べれば、少なくとも200~300kg、車種によっては500kg以上軽いから、173psでも動力性能に不満はない。 レッドゾーンは4500回転からだが、ちょっと活発に走る時は3000~4000回転くらいが気持ちよく、さらに踏み込むとレッドゾーンを踏み越えて5500回転くらいまでサラッと回る。意外と高回転型?というか、上まで気持ちよく回ってしまうエンジンだ。回転計の数字を見なければ、ものすごくフラットなトルク特性のガソリン低圧ターボみたいでもある。

力強さに油断するとエンスト

面白いのが3速か4速でダラダラと走っているときにアクセルを抜くと、普通のガソリンMT車なら緩やかにエンブレが掛かって減速するところを、「20GT」は逆にトトトトと、どんどん加速して?いってしまうように感じられること。この感覚は、大排気量のV8ガソリン車にもないもので、ディーゼル特有と言えるだろう。 逆にその高トルクにドライバーが油断してか、ターボゆえ極低回転(1000回転前後)のトルクが弱いのか、交差点の右左折などで、ストンとエンストしてしまうこともある。いずれにしても徐行くらいまで速度が落ちた時は、2速で半クラッチを当てるようなズボラ運転ではなく、すかさず1速に入れ直した方が良い。ディーゼルターボを扱う上では当然の話かもしれないが。

どっしりユルユル快適。最高速はUK仕様で200km/h

最近の日産車が得意とするフカフカシートとストローク感のある足まわりのおかげで、乗り心地は下手なタクシーより快適。ガソリン車より車重が増えたせいか、ますますどっしりユルユルなフランス車濃度が高いように思えた。ディーゼル専用にボディやエンジンマウントが補強されたほか、制振材や遮音材も大幅に追加され、高遮音ガラスも採用されている。 100km/h巡航は、6速トップで約1900回転。当然ながらまったく快適で、そこからアクセルを踏み込めばグイグイ加速する。パワーウエイトレシオ自体は1670kg/170ps=で約10kg/psだから、メチャクチャに速くはないが、160km/h巡航くらいは楽勝だ。メーカー発表(UK仕様)の0-100km/h加速は10.0秒、最高速度は200km/hだから(日本仕様では当然リミッターが介入するはず)、さもありなん。静粛性はアクセル全開時でさえ、まったく問題ないと思えた。

ガソリンに比べて燃費で1~3割、燃料価格で2割安い

参考ながら、試乗燃費はいつもの試乗区間(約90km、大雨の中)で10.6km/L。郊外の一般道を約60km、通勤ペースで走った区間は、13.3km/Lだった(いずれも車載燃費計の数値)。低回転のままハイペースで走れるので、燃費の落ち込みは少ないという印象を受けた。この走りっぷりでこの燃費は、期待通り良好と言えるだろう。ちなみに、2リッターガソリン・CVT車に試乗した時は、トータルで約7km/L、信号の多い一般道で8km/L台、条件のいい一般道でも9km/L台だった。 また10・15モード燃費は15.2km/Lである。これはエクストレイルの2リッターガソリン車(CVT・4WD)の13.6km/Lより約12%、同ガソリン車(6MT・4WD)の13.2km/L(CVTより燃費が悪い)より約15%、2.5リッターガソリン車(CVT・4WD)より約30%も優秀であり、上の実燃費とも矛盾しない。 そして軽油の値段は、試乗時点で1リッターあたり140円(実際には割引で137円)だった。レギュラーガソリンは、同じく168円(同165円)だったので、約2割弱安かったことになる。 つまりトータルで考えると、ガソリン車に比べて約3割から4割は経済的ということだ。ディーゼルの6MT車の場合、10・15モード燃費と実燃費との落差が少ないので、実際にはもっと有利かもしれない。 ■参考 日産自動車>プレスリリース>エクストレイル クリーンディーゼル車で北海道1000km無給油走行を達成(2008年10月24日)

ここがイイ

胸を張って乗れるディーゼル。キャラクターに合った性能・特性。静粛性、快適性

エクストレイルというクルマに関しては、過去の試乗記で、適度なボディサイズ、運転しやすさ、実用性の高さとなど、イイところをたくさん書いている。今回はそれに加えて、石原都知事を土下座させるディーゼルエンジンのクリーン性能だ。もはや当たり前かもしれないが、黒煙はまったく出ない。DPF(黒煙の主成分であるPM=粒子状物質を99%以上除去する)付きなら当然だろうが、これに加えてNOxを専用の触媒(リーンNOxトラップ触媒)で浄化もしている。こうしてポスト新長期規制をクリアしたことはすごい。ディーゼルに胸を張って乗れるとは、素晴らしい時代が来たものだ。 そんな超トルクフルなエンジンとスコスコ決まる6MTは、まさに「GT」らしいもの。重量バランスの問題を無視すれば、このままスカイライン・クーペやフェアレディZに積んでも良さそうなくらい、気持ちよく走る。むろんSUVたるエクストレイルという車両のキャラクターに合ったエンジンでもある。これでATなら、ガソリンエンジンより断然ふさわしいと言える。